・出願商標「GEORGIA」は、アメリカのジョージア州を意味するところ、出願商標の識別力が問題になりました
・商標法第3条第1項第3号に該当するためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを必要ない旨、示されました
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、最高裁判所の昭60年(行ツ)第68号の判決、いわゆる「GEORGIA」事件の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
コカ・コーラ社が、「コーヒー」「紅茶」「ココア」などを指定して、商標「GEORGIA」を出願しました。
特許庁の審査において、出願商標「GEORGIA」は、アメリカの州の1つであるジョージア州を意味するので、商品の産地を表示しているに過ぎず、識別力を有さないとして拒絶されました。
コカ・コーラ社は、この判断に不服があり、拒絶査定不服審判を請求しましたが、判断が覆りませんでした。
さらに、拒絶審決に対して、訴訟を提起しましたが、原告の請求が棄却されて、審決が維持されたので、最高裁判所に対して、上告したのが、本件になります。
裁判所の判断
結論から言えば、裁判所は、本願商標が識別力を有さないという判断を支持して、上告を棄却しました。
商標法第3条第1項第3号に規定する、以下の商標は、原則、商標登録を受けることができません。
商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
本件で争点になったのは、商標法第3条第1項第3号の適用にあたり、出願商標が付された商品が、実際に、その商標が表示する土地で生産・販売されている必要があるかどうか、になります。
つまり、出願商標「GEORGIA」が付されたコーヒーなどが、実際に、アメリカのジョージア州で生産・販売されていないので、出願商標は商標法第3条第1項第3号には該当しないというのが、原告の主張だと考えます。
裁判所は、商標法第3条第1項第3号に該当するためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを必要としないと判断しました。
需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され、又は、販売されているであろうと一般に認識されることをもって足ります。
出願商標「GEORGIA」に接した需要者又は取引者は、その指定商品であるコーヒー、コーヒー飲料等が、アメリカのジョージア州で生産されているものであろうと一般に認識するので、出願商標が識別力を有さないという判断を最高裁判所は支持しました。
判例から学べること
商標に国名や都市名を使用することは、多々あり、識別力の観点で、問題になることがあります。
その場合に、実際に、その国や都市で、販売・生産されていなくても、需要者・取引者が、その土地で、販売・生産されているだろうと認識されれば、足ります。
商標に国名や都市名が含まれている場合、識別力の判断の際には、この判例を参考にしましょう。