区分が違えば、必ず、商標登録できると、勘違いしているお客様が多いです。
12年以上の弁理士歴がある商標専門の弁理士が、商標に関する正しい知識を伝えます。
この記事を読めば、違う区分に、同一もしくは類似の先行商標があった場合、商標登録できるか、教えます。
また、同一の区分に、同一もしくは類似の先行商標があった場合でも、商標登録できるケースを紹介します。
商標登録の区分は、商品・役務(サービス)のカテゴリー
簡単にいえば、区分は、商品・役務(サービス)の属するカテゴリーです。
区分は、全部で45個に分かれています。
1類~34類は商品の区分で、35類~45類は役務(サービス)の区分です。
各区分の商品・サービスをざっくりと紹介すると、以下のリストの通りです。
1類 | 化学品 | 16類 | 紙、紙製品、事務用品 | 31類 | 生きている動植物 |
2類 | 塗料、着色料 | 17類 | 電気絶縁用などの材料 | 32類 | アルコールを含有しない飲料、ビール |
3類 | 洗浄剤、化粧品 | 18類 | 革、旅行用品、馬具 | 33類 | ビールを除くアルコール飲料 |
4類 | 工業用油、工業用油脂、燃料、光剤 | 19類 | 金属製でない建築材料 | 34類 | たばこ、喫煙用具、マッチ |
5類 | 薬剤 | 20類 | 家具 | 35類 | 広告、事業の管理、小売・卸売 |
6類 | 卑金属、その製品 | 21類 | 家庭用品、化粧用具、ガラス製品 | 36類 | 金融、保険、不動産の取引 |
7類 | 加工機械 | 22類 | ロープ製品、織物用の原料繊維 | 37類 | 建設、設置工事、修理 |
8類 | 手動工具 | 23類 | 織物用の糸 | 38類 | 電気通信 |
9類 | 科学用、電気制御用などの機械器具 | 24類 | 織物、家庭用の織物製カバー | 39類 | 輸送、旅行の手配 |
10類 | 医療用機械器具、医療用品 | 25類 | 被服、履物 | 40類 | 物品の加工その他の処理 |
11類 | 照明用、加熱用などの装置 | 26類 | 裁縫用品 | 41類 | 教育、娯楽、スポーツ、文化活動 |
12類 | 乗物その他移動用の装置 | 27類 | 床敷物、織物製でない壁掛け | 42類 | コンピューター、ソフトウェアの開発 |
13類 | 火器、火工品 | 28類 | 玩具、遊戯用具、運動用具 | 43類 | 飲食物の提供、宿泊施設の提供 |
14類 | 貴金属、宝飾品、時計 | 29類 | 動物性の食品、加工食品 | 44類 | 医療、美容、農業のサービス |
15類 | 楽器 | 30類 | 植物性の加工食品、調味料 | 45類 | 冠婚葬祭、警備、法律のサービス |
なお、類似商品・役務審査基準では、より詳細かつ具体的に、各区分の商品・サービスを紹介しています。
区分が違えば、商標登録できる可能性が高い
区分が違えば、必ず、商標登録できるというのは、「間違い」です。
確かに、区分が違えば、商品・サービスのカテゴリーが相違します。
そのため、区分が違えば、商標登録できる可能性が高いです。
しかし、必ず、商標登録できるわけではありません。
区分が違っても、商標登録できないケースがあります。
【注意】区分が違っても、商標登録できない可能性がある
勘違いしている人も多いですが、区分が違っても、商標登録できない危険性があります。
つまり、区分が違っても、商品・役務(サービス)が類似するケースがあります。
具体的には、以下のケースです。
- 商品と、その商品の小売業
- 他区分でも、商品が類似する
- 他区分でも、役務(サービス)が類似する
商品と、その商品の小売業は、原則、類似します。
具体的に言えば、例えば、以下の商品と役務(サービス)は、類似します。
- 25類「被服」と35類「被服の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
- 16類「文房具類」と35類「文房具類の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
35類の「被服の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定する類似の登録商標があったとします。
その場合、25類に類似する登録商標がなくても、「被服」において、商標登録を取得できません。
区分が違っても、類似する商品も、結構、あります。
例えば、以下の商品は、区分が違っても、類似します。
- 5類「綿棒」と8類「ピンセット」(類似群コード01C01)
- 6類「金庫」と20類「家具」(類似群コード20A01)
- 6類「金属製鍵」と14類「キーホルダー」(類似群コード13C02)
類似群コードが一致すれば、商品が類似すると判断されます
例えば、5類において、類似する登録商標がなかったとします。
しかし、8類の「ピンセット」を指定する類似の登録商標があれば、5類「綿棒」において、商標登録できません。
区分が違っても、類似する役務(サービス)も、結構、あります。
例えば、以下の役務(サービス)は、区分が違っても、類似します。
- 39類「企画旅行の実施」と43類「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」(類似群コード42A02)
- 44類「美容」と45類「着物の着付け」(類似群コード42C01)
例えば、美容院オープンのため、44類「美容」で、商標出願を検討していたとします。
45類の「着物の着付け」を指定する類似の登録商標がありました。
その場合、44類に類似する登録商標がなくても、44類「美容」で商標登録できません。
区分が同じでも、商標登録できることがある(すぐには諦めない!)
逆に、区分が同じでも、商標登録できることも多々あります。
同じ区分に、同一・類似の先行商標が見つかっても、すぐに諦めないでください。
例えば、以下の商品・役務(サービス)は、同じ区分ですが、類似しません。
- 「洋服」と「ベルト」
- 「文房具類」と「写真立て」
- 「ケーブル」と「スピーカー」
- 「教育」と「セミナーの開催」
- 「外科治療」と「はり治療」
25類の「洋服」の類似群コードは、「17A01」です。
一方、25類の「ベルト」の類似群コードは、「21A01」です。
よって、同じ25類でも、「洋服」と「ベルト」は、類似しません。
「洋服」と「ベルト」、どちらもアパレル商品ですが、類似しないんですか?
類似群コードが違うので、原則、非類似の商品と判断します
16類の「文房具類」の類似群コードは、「25B01」です。
一方、16類の「写真立て」の類似群コードは、「26D01」です。
よって、同じ16類でも、「文房具類」と「写真立て」は、類似しません。
9類の「ケーブル」の類似群コードは、「11A05」です。
一方、9類の「スピーカー」の類似群コードは、「11B01」です。
よって、同じ9類でも、「ケーブル」と「スピーカー」は、類似しません。
「ケーブル」と「スピーカー」、どちらも家電量販店で販売されている商品ですが、類似しないんですか?
両商品の類似群コードが相違するので、これらの商品も、原則、類似しません
41類の「教育」の類似群コードは、「41A01」です。
一方、41類の「セミナーの開催」の類似群コードは、「41A03」です。
よって、同じ41類でも、「教育」と「セミナーの開催」は、類似しません。
44類の「外科治療」の類似群コードは、「42V02」です。
一方、44類の「はり治療」の類似群コードは、「42V01」です。
よって、同じ44類でも、「外科治療」と「はり治療」は、類似しません。
【重要】区分ではなく、指定商品・役務で、商標登録の権利範囲を判断すべき!
商標登録の権利範囲は、区分ではなく、指定商品・役務で判断します。
他区分でも、類似する商品やサービスがあるので、区分だけに着目すると、正確には判断できません。
さらに厳密に言えば、指定商品・役務の類似群コードをもとに、考えます。
区分をもとに判断すると、判断を間違える危険性があるので、注意です!
商標業務を取り扱う弁理士であれば、「常識」ですが、ほとんどの人は、商標に関する知識が豊富ではありません。
多くのお客様が、勘違いしている点なので、注意しましょう!
商標登録できるか、分からなければ、商標専門の弁理士に相談!
データベース「J-PlatPat」を利用すれば、登録商標・出願商標を調べることができます。
しかし、データベースでも、商標登録できるか、分からないこともあるでしょう。
判断に迷うようであれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。
筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・先行の商標登録と区分が違えば、商標登録できる可能性が高いです。しかし、区分が違っていても、商標登録できないケースもあります
・その逆に、先行の商標登録と区別が同じでも、商標登録できるケースも多いです。同一の区分だから、商品・サービスが類似するとは限りません
・商標登録の権利範囲を、区分で判断してはいけません。正しくは、商標登録の指定商品・役務、及び、それらの類似群コードで、権利範囲を判断します