・本願商標「」と引用商標「」が類似すると裁判所が判断しました
・他の文字と組み合わせても、商標の構成によっては、先行商標と区別することができない危険性がありますので、注意しましょう。
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の令和3年(行ケ)第10148号の判決、「nico」ロゴ商標の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
原告は、「せっけん類」「化粧品」などの商品を指定して、以下の商標を出願しました。
しかし、特許庁の審査において、本願商標が、以下の先行商標と類似するとして、本件の商標出願が拒絶されました。
この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しましたが、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。
原告(出願人)が、この審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが、本件になります。
裁判所の判断
あなたは、本願商標「」と引用商標「」が類似していると思いますか?
結論からいえば、本願商標と引用商標が類似しているとして、裁判所は原告の請求を棄却しました。
本願商標は、上段に「natural baby soap」、下段に「nico」の文字を配置しています。
本願商標の上段部分は、下段部分と比べて小さく記載され、また、上段部分と下段部分とを分離して観察することが取引上不自然とはいえないとして、本願商標の要部(主要部分)は下段の「nico」部分と判断しています。
また、本願商標中の「nico」部分は、ロゴ化(図案化)されているものの、「nico」の文字を認識できるので、「nico」の文字に対応して、「ニコ」の称呼(読み)が生じます。
さらに、本願商標の要部の下段の「nico」部分と引用商標の「NICO」部分を比較すると、外観において類似し、称呼(読み)は同一であると考えました。
このような状況から、本願商標及び引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所を誤認混同するおそれがあるので、本願商標と引用商標は類似すると裁判所は判断しました。
判例から学べること
同一・類似の先行商標を見つけた場合には、先行商標と区別できるように、他の文字を組み合わせることがあります。
しかし、本件のように、組み合わせた文字が小さかったり、商標の構成によっては、依然として、先行商標と類似する危険性があります。
他の文字と組み合わせて、先行商標との差別化を図る場合には、商標が全体として一体的に認識されるように、注意しましょう。
なお、下記の判例では、本件とは反対に、商標が類似しないと判断されましたので、ご参照ください。