・商標法上、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は、商標登録を受けることができません
・この規定などにより、著名商標は、一般的な商標に比べて、厚く保護されています
・「鬼滅の刃」に関する事例からも、著名商標の保護が厚いことが分かります
著名商標の商標法の保護規定
日本には、誰もが知っているような著名な商標が、いくつもあります。
著名商標は、他人に真似されることが多く、一般的な商標に比べて、厚く保護されます。
著名商標の保護に関する代表的な規定は、商標法第4条第1項第15号になります。
商標法第4条第1項第15号において、以下の商標は、商標登録を受けることができない旨、定められています。
他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標
この規定において、商標が類似していることや商品・役務が類似していることが要件(条件)には含まれておらず、さらには、商標登録も必須ではなく、未登録でも対象になります。
著名な商標であれば、この規定を根拠に、多くの他人の商標出願を排除することができます。
人気の漫画・アニメ「鬼滅の刃」とは
突然ですが、あなたは、「鬼滅の刃」を知っていますか?
2016年から2020年まで週刊少年ジャンプに連載されていた漫画の名称で、TVアニメ化・映画化もされました。
特に、映画「鬼滅の刃 無限列車編」は、日本歴代一位の約404億円の興行収入を記録して、社会現象になりました。
よって、「鬼滅の刃」は、日本において、老若男女を問わず、広く知れ渡っており、著名商標に該当すると考えられます。
なお、「鬼滅の刃」が大ヒットしたことで、集英社は、以下の通り、主要キャラクターの衣装の柄も、商標登録を取得しています。
特許庁による著名商標「鬼滅の刃」の保護の実例
「鬼滅の刃」が社会現象になり、爆発的なヒットを記録したこともあり、以下のような商標「鬼滅」や「鬼滅」を含む商標が特許庁に出願されました。
これらの指定商品は、漫画や映画など、エンタメ関連のものではありません。
しかし、「鬼滅」の文字から、多くの人が「鬼滅の刃」を想起しますので、「鬼滅の刃」と何らかの関連がある商品と誤認・混同するおそれがあります。
特許庁は、商標法第4条第1項第15号を根拠に、これら2件の商標出願を拒絶しています。
また、以下の平仮名の「きめつ」が含まれている商標も、商標法第4条第1項第15号を根拠に、特許庁で拒絶されました。
特許庁では、上記の出願商標も、「鬼滅の刃」に関連した商品であると商品の出所を混同させるおそれがあると判断しました。
さらに、以下のように、「菌滅」に平仮名の「きめつ」と記載した商標も、商標法第4条第1項第15号を根拠に、特許庁で拒絶されました。
「鬼滅の刃」は、幅広い分野において、多くのコラボレーションが行われています。
「きめつ」の文字を含み「菌滅」の文字を「きめつ」と読ませようとする出願商標は、「鬼滅の刃」の関係がある商品であるかの如く、商品の出所の混同を生じさせるおそれがあると特許庁は判断しました。
自分の商標が厚い保護を受けるために
「鬼滅の刃」のように、社会現象になった商品・サービスの名称は、特許庁においても、慎重に審査して、厚く保護を受けられます。
多くの人に知れ渡り、商標が著名になっていく程に、商標の保護範囲が広がる可能性があります。
なお、商標が著名であるかどうか、争われることがあるので、商標の使用実績などは、きちんと保管しましょう。
対策に迷うようであれば、商標専門の弁理士にご相談ください。
筆者(すみや商標知財事務所)にご相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士