多くの会社にとって、会社名は、極めて重要です。
そのため、会社名を商標登録することが多いです。
筆者は、10年以上、商標専門の弁理士として働いていて、数多くの会社名の商標登録をお手伝いしました!
一方、多くの人が、会社名の商標登録のやり方を知りません。
この記事を読めば、会社名の商標登録のやり方が分かります。
また、会社名の商標登録までの流れも教えます。
会社名の商標登録までの流れ
会社名の商標登録を取得するには、商標出願する必要があります。
それでは、商標出願してから、その後の流れを知っていますか?
特許庁のホームページで、商標審査の流れを、簡潔にチャートで説明しています。
よって、会社名を商標登録するためには、出願人は、以下の手続きが必要です。
- 商標登録の願書の作成
- 拒絶理由通知書が届いた場合には、応答書面の作成
- 登録料の納付書の作成
これらの3つの手続きについて、詳しく紹介していきます。
会社名の商標登録のやり方①(願書の作成方法)
商標登録の取得のためには、商標出願する必要があり、具体的には、特許庁に願書を提出します。
願書の作成を弁理士に依頼することが多いですが、頑張って、自力で作成することもできます。
商標権の権利範囲は、願書に基づいて、決定するので、十分に注意して、作成しましょう。
まずは、願書のフォームを入手しよう!
「知的財産相談・支援ポータルサイト」というウェブサイトで、願書のフォームを入手できます。
ワード形式のデータでも、入手可能で、このフォームを利用して、願書を作成します。
商標登録の願書の記載項目をざっくり説明
以下の商標登録の願書の記載項目について、ざっくりと説明していきます。
- 商標登録を受けようとする商標
- 指定商品・役務と区分
- 商標登録出願人
①商標登録を受けようとする商標
出願したい商標を記載する欄です。
権利範囲になるので、間違いのないよう、十分に注意しましょう。
出願後、出願商標って、修正できるんですか?
原則、出願商標を修正できません!
大きさ8cm平方の商標記載欄(四角い枠線)の中に、直接、文字や図形などを記載します。
また、標準文字で商標出願したい場合、商標登録を受けようとする商標の次に【標準文字】 と記載します。
標準文字制度について、詳しくは以下の記事で紹介しています。
標準文字って何?標準文字の利用が有効なケース・商標登録例や注意点も紹介②指定商品・役務と区分
商標権は、マークと、そのマークを使用する商品・サービス(役務)の組合せで一つの権利になります。
つまり、指定商品・役務も、権利範囲になるので、注意して記載しましょう。
指定商品・役務って、何ですか?
出願商標を使用している、または、使用を予定している商品・役務(サービス)です
「【指定商品(指定役務)】被服」のように、商標登録を取得したい商品・役務を記載します。
商品・役務の内容及び範囲を明確ではないと、審査において、拒絶理由が通知されます。
③商標登録出願人
【識別番号】の欄は、特許庁から識別番号の通知を受けている場合のみ記載します。
初めて商標出願する場合、【識別番号】の欄は不要ですか?
はい、記載しなくて大丈夫です!
【住所又は居所】は、「○○県○○市○○町○○丁目○○番○○号」のように具体的に記載します。
なお、識別番号を記載した場合、【住所又は居所】を省略できます。
【氏名又は名称】の欄は、個人の場合、出願人の氏名を記載してください。
一方、法人の場合には、【氏名又は名称】の欄に、法人の名称・商号を記載し、また、【代表者】の欄を設け、代表者の氏名を記載します。
代表者の役職を書かなくていいですか?
はい、役職等の肩書きは不要です!
【電話番号】の欄は、なるべく連絡のつく電話番号を記載し、また、【国籍・地域】の欄は、出願人が外国人の場合に記載します。
会社名の商標登録の願書の記載例
例えば、筆者が、「ABC株式会社」という名前の広告代理店をオープンするとします。
筆者の個人の名義で、広告業において、「ABC」という名称を商標登録したいと考えました。
その場合、商標出願の願書を、例えば、以下のように記載します。
会社名の商標登録の願書作成の注意点
会社名の商標登録の願書を作成する際には、いくつかの注意点があります。
その中でも、権利範囲や費用に関連する「商標登録する商標」と「商標登録する区分」については、特に注意すべきです。
- 商標登録する商標に、「株式会社」を含めるか?
- 文字とロゴ、どちらで商標登録するか?
- 商標登録する区分をどうするか?
①商標登録する商標に、「株式会社」を含めるか?
まず、商標登録する商標に、「株式会社」を含めるか、迷います。
登記簿上の商号で、「株式会社」を含めたフルネームで商標登録する会社もあります。
しかし、「株式会社」を除いて、商標登録する会社の方が多いです。
【会社名の商標登録の参考例】
「株式会社」を除いた商標登録の例は、以下の通りです。
商標「永谷園」(商登第5139654号)
商標「任天堂」(商登第4212137号)
商標「ソフトバンク」(商登第4901165号)
商標「日産自動車」(商登第4340757号)
商標「花王」(商登第3027308号)
なお、ほんの一握りの事例を紹介しただけで、実際、多くの会社が、自分の会社名の商標登録を取得しています。
②文字とロゴ、どちらで商標登録するか?
文字ではなく、ロゴで商標登録することも多いです。
例えば、以下のようなロゴです。
商標「」(商登第6472729号)
商標「」(商登第5879055号)
商標「」(商登第5876847号)
商標「」(商登第1715499号)
商標「」(商登第5419081号)
原則、消費者が最も着目する態様で、商標登録するよう、アドバイスしています。
よって、文字ではなく、ロゴをメインで使用する場合には、ロゴで商標登録することが考えられます。
お金に余裕がある場合には、文字とロゴ、両方とも商標登録することもあります!
③商標登録する区分をどうするか?
区分は、商品・サービスのカテゴリーで、商標登録する区分の数によって、費用が変動します。
「会社名」というような区分はありません。
よって、「その商標(会社名)をどのような商品・サービスに使うか」に基づいて区分を決めます。
会社名の場合、基本的には「その会社で取り扱う全ての商品・サービス」について使う可能性があります。
よって、会社で取り扱う商品・サービスを網羅的に商標登録するのが基本です。
会社名の商標登録のやり方②(拒絶理由通知の応答方法)
商標出願したら、特許庁の審査を受けます。
商標登録を認められないと審査官が判断した場合、拒絶理由通知書が届きます。
応答期限は、拒絶理由通知から40日以内
応答期限内に応答しないと、商標出願が拒絶される危険性があります。
通常は、拒絶理由通知書の発送日から40日が応答期限です。
ただし、外国法人のような在外者の場合、発送日から3ヵ月が応答期限です。
また、特許庁に期間延長を請求することで、応答期限を延長でき、延長できる期間は、最大で3ヵ月です。
拒絶理由通知への応答には、意見書や手続補正書を特許庁に提出
拒絶理由通知に応答するためには、期限までに、意見書や手続補正書を特許庁に提出します。
意見書・手続補正書のフォームは、こちらから、入手できます。
このフォームを利用して、特許庁への応答書面を作成しましょう。
なお、具体的な記載方法については、以下の記事で、詳しく紹介しています。
商標出願の意見書の書き方(書式面の説明) 指定商品・役務の補正方法や注意点を、分かりやすく紹介!拒絶理由通知の内容によって、応答方法を考えよう!
拒絶理由通知の内容によって、応答方法が異なります。
例えば、先行商標が問題となった場合には、意見書を提出し、出願商標が先行商標とは類似しない旨、反論することが考えられます。
一方、指定商品・役務の表示が不明確と判断された場合には、手続補正書を提出して、対象の表示を補正することが考えられます。
拒絶理由通知の応答方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
【有料級】商標出願したら、拒絶理由通知書が届いた!?対応方法を解説会社名の商標登録のやり方③(登録料の納付書の作成方法)
特許庁の審査で、出願商標の登録が認められると、登録査定が送付されます。
登録査定が届いただけで、出願商標が自動的に登録にはなりません。
特許庁に登録料を納付することで、10年間、会社名の登録商標が保護されます。
登録料の納付期限は、登録査定から30日以内
出願商標を登録にするには、登録査定が届いてから30日以内に、登録料を納付する必要があります。
具体的には、特許庁に商標登録料納付書を提出します。
フォームを入手して、商標登録料納付書を作成
特許庁のホームページから、以下のような様式見本を入手できます。
項目ごとの記載内容については、以下の記事で詳しく紹介しています。
商標の登録料は、どうやって納付する?納付書の記載方法や一括納付・分割納付の各々のメリットを紹介商標登録料納付書の記載例
筆者は、自分の事務所名を、個人の名義で商標出願しています。
10年分で登録料を納付する場合、以下のように、商標登録料納付書を記載します。
自力での会社名の商標登録が難しければ、商標専門の弁理士に依頼!
実際に、自力での会社名の商標登録しようとしたら、難しいと感じることもあるでしょう。
そのような場合、商標専門の弁理士に依頼を検討しましょう。
また、自分で商標出願にチャレンジしたものの、特許庁から拒絶理由通知書が届き、困ってしまうことが多々あります。
そのような場合、途中から、弁理士に頼ってもOKです。
筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
弁理士歴12年以上の商標専門の弁理士
・会社名を商標登録するには、まず、商標登録の願書を特許庁に提出する必要があります。商標登録する商標や区分などは、権利範囲・費用に関係するので、慎重に検討しましょう
・商標登録できないと審査官が判断した場合、拒絶理由通知書が届きます。期限内に応答しないと、商標出願が拒絶されます
・特許庁から登録査定が届いたら、30日以内に、商標登録料納付書を特許庁に提出して、登録料を納付します。これにより、10年間、登録商標が保護されます