「ケントブロス」事件の判例紹介

まとめ

・被告の「」及び「」の使用が、原告の「KENT」の商標権を侵害すると裁判所が判断しました

・被告は商標登録を取得していましたが、登録商標の専用権の範囲内の使用に当たらないと裁判所が判断しました

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、東京地方裁判所の令和2年(ワ)第1160号の判決、「ケントブロス」事件の判例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

原告は、以下の2件の商標登録を保有していました。

(商登第653109号)                                                  
(商登第5037926号)

一方、被告は、以下のような被服を販売し、また、販売のために展示していました。

上記の被服には、以下のようなデザイン(使用標章)が施されています。

なお、被告は、商品「洋服」などを指定する以下の商標登録を保有しています。

(商登第5225111号)

このような状況下で、原告が、自己の商標権に基づき、被服の販売の中止などを求めて、被告を訴えたのが本件になります。

裁判所の判断

あなたは、被告の被服の販売行為が、原告の商標権の侵害に該当すると思いますか?

つまり、被告の使用標章から、「KENT」の文字が分離・抽出して、認識されるでしょうか?

結論から言うと、被告の行為が原告の商標権を侵害するとして、裁判所は、原告の差し止め請求を容認しました

被告の使用標章は、「KENT」「BROS.」の文字が二段併記になっている、もしくは、「KENT」「MARINE SPILIT」「BROS.」の文字が三段併記になっています。

裁判所は、横一列に配されている場合と比較して、結合の度合いが、相当、弱くなると判断しています。

また、原告の商標「KENT」は、限られた期間及び回数ながら、著名人を起用したテレビCMが全国に放映されていました。

このことに照らせば、原告の商標は、被服の分野において、相応の周知性を有していて、被告の使用標章の「KENT」の文字は、商品の出所識別標識として相当強い印象を与えていると裁判所は考えました。

よって、被告の使用標章から「KENT」の文字が分離・抽出して認識されるので、原告の登録商標と被告の使用標章が類似すると判断し、被告が原告の商標権を侵害していると判断しました。

なお、上述した通り、被告は、二段併記の「KENT BROS./ケントブロス」の商標登録を保有しています。

しかし、実際の被告の標章の使用は、「KENT」と「BROS.」を二段に併記しています。

よって、被告標章の使用は、登録商標の専用権(独占的・排他的な権利)の範囲内の使用に当たるとは認められないと、裁判所は判断しています

判例から学べること

本件において、被告は商標登録を取得していましたが、実際の使用態様は、登録商標とは相違していました。

その結果、商標登録を取得していたにも関わらず、原告の商標権に該当すると判断しました。

きちんと商標登録を考慮して、その範囲に含まれるように、商標を使用しましょう

また、商標出願の際には、使用態様を意識ながら、どのような商標を出願するか、決めましょう

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