NHKは、多数のテレビ番組を放映しています。
しかし、NHKは、全てのテレビ番組の名称を、商標登録していません。
弁理士歴12年以上の筆者が、NHKのテレビ番組名の商標登録を調べました。
この記事を読めば、NHKの商標戦略が分かります。
また、どのような名称に、コストを掛けて、商標登録を取得すべきか、学べます。
NHKのテレビ番組について
あなたは、NHKのテレビ番組を視聴していますか?
2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、三谷幸喜さんが脚本を担当して、人気を博しました。
2023年の大河ドラマは、松本潤さん主演の「どうする家康」で、多くの人が楽しみ、2024年は、吉高由里子さん主演の「光る君へ」が放送されています。
また、NHKの連続テレビ小説、いわゆる「朝ドラ」を、毎朝、観ている人も多いです。
さらに、インターネットで普及した現在でも、大みそかの紅白歌合戦は、高い視聴率を誇っています。
その他に、「NHKのど自慢」「チコちゃんに叱られる」「クローズアップ現代」など、NHKには多数の長寿番組・人気番組があります。
朝ドラと大河ドラマの商標登録(NHKにとって重要なテレビ番組)
NHKのテレビ番組は、株式会社NHKエンタープライズが制作しています。
NHKエンタープライズが、NHKのテレビ番組の名称に関する商標登録を保有しています。
2024年6月12日の時点で、データベース「J-PlatPat」で検索すると、NHKエンタープライズ社名義の商標登録・商標出願は、222件です。
なお、教育テレビ(Eテレ)については、株式会社エヌエイチケイエデュケーショナルが番組を制作して、商標出願も行っています。
調べてみると、全てのNHKのテレビ番組の名称が商標出願されているわけではありません。
商標出願されているテレビ番組の名称はかなり少なく、厳選されています。
しかし、朝ドラと大河ドラマの商標登録には、積極的です。
商標出願をチェックすると、NHKが朝ドラと大河ドラマを重視していることが分かります!
近年の朝ドラの名称は、漏れなく、商標登録しています。
例えば、近年の放送された「舞いあがれ!」・「らんまん」、前作の「ブギウギ」、いずれも商標登録済みです。
また、現在、放送中の伊藤沙莉さん主演の「虎に翼」も、商標登録しています。
さらに、2025年前期に放送予定の朝ドラの名称「あんぱん」も、商標出願しています。
「やなせたかし」さんとその妻を主人公のモデルとしたフィクション作品です。
近年の大河ドラマの名称も、漏れなく、商標登録しています。
例えば、2023年に放送の「どうする家康」、2024年に放送中の「光る君へ」、いずれも商標登録しています。
さらに、2025年に放送予定で、横浜流星さん主演の大河ドラマの名称も、商標登録しています。
2026年に放送予定で、仲野太賀さん主演の大河ドラマの「豊臣兄弟!」も、商標出願しています。
このことから、朝ドラと大河ドラマは、NHKにとって、特別なテレビ番組であることが分かります。
また、これらのドラマの舞台の地域では、町おこしのために、ドラマの名称を使用した菓子などの商品も販売されます。
よって、様々な商品やサービスにドラマの名称が使用されるので、広範囲に商標登録を取得しています。
その他のNHKの商標登録(グッズ展開しているテレビ番組)
実際に、全ての番組名を商標出願しようとすると、費用が高額になってしまいます。
NHKの番組には人気を博して、通販サイトや店舗などで、関連するグッズを販売しているものもあります。
登録商標や出願商標をチェックしてみると、グッズ展開しているテレビ番組の名称については、優先的に商標登録しています。
例えば、以下のような登録商標を取得しています。
NHKは、グッズ展開しているテレビ番組名を、優先的に商標登録を取得しています
NHKの商標登録から分かる、NHKの商標戦略は「選択と集中」
NHKは、放送しているテレビ番組の名称を全て商標出願しているわけではありません。
しかし、NHKの商標戦略として、朝ドラ・大河ドラマの名称は、きちんと商標出願しています。
また、グッズ展開している番組名も、優先的に商標出願しているようです。
全てのテレビ番組を商標出願するとコストも掛かるので、出願する商標を絞る必要があります!
商標登録すると決めたテレビ番組名に対しては、コストを掛けて、広範囲に商品・サービスをカバーしています。
例えば、「豊臣兄弟!」の商標出願は、以下の計21区分の商品・サービスをカバーしています。
- 3類(化粧品 など)
- 4類(ろうそく など)
- 9類(ダウンロード可能な映画又は映像 など)
- 14類(キーホルダー など)
- 16類(文房具類など)
- 18類(かばん類 など)
- 20類(クッション など)
- 21類(貯金箱 など)
- 24類(まくらカバー など)
- 25類(被服 など)
- 28類(おもちゃ など)
- 29類(乳製品 など)
- 30類(茶 など)
- 31類(野菜 など)
- 32類(清涼飲料 など)
- 33類(清酒 など)
- 34類(喫煙用具 など)
- 39類(鉄道による輸送 など)
- 40類(刺しゅう など)
- 41類(インターネットを利用して行う映像の提供 など)
- 43類(宿泊施設の提供 など)
出願時に特許庁に支払う印紙代(費用)だけでも、18万円を超えます。
このように、重要度や必要性に応じて、出願する商標を選択して、コストを集中するのも、商標の実務では重要です。
NHK以外のテレビ局の商標登録(商標戦略)
以下の記事で、民放のテレビ局の例として、日本テレビの商標戦略を紹介しています。
日本テレビは、番組名よりも、番組キャラクターの商標出願を積極的に行っている印象です。
テレビ局によって、商標戦略が異なっていて、興味深いです。
商標戦略で迷ったら、商標専門の弁理士に相談!
自社の商標戦略を考えたときに、どうすべきか、迷うこともあると思います。
商標戦略で迷ったら、商標専門の弁理士に相談しましょう。
筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・NHKは、テレビ番組の名称を全て商標出願しているわけではありません
・朝ドラや大河ドラマの名称など、重要度の高いものは、商標出願しています
・重要度や必要性に応じて、出願する商標を選択するのも、商標の実務では重要になります