商標法が改正されて、2015年4月1日に、商標法の保護の対象が広がりました。
いわゆる「新しいタイプの商標」が保護できるようになりました。
筆者は、商標専門の弁理士として、「新しいタイプの商標」の商標出願をお手伝いしたことがあります。
この記事を読めば、どのような商標が、新しいタイプの商標に該当するか、分かります。
また、新しいタイプの商標登録の事例を具体的に教えます。
新しいタイプの商標とは
新しいタイプの商標とは、具体的には、以下の5つです。
- 音商標
- 色彩のみからなる商標
- 動き商標
- ホログラム商標
- 位置商標
今回は、これら5つの「新しいタイプの商標」を、それぞれ簡単に紹介していきます。
2015年4月から保護対象になった5つのタイプの商標を、総称して、「新しいタイプの商標」と言います
ちなみに、「新しいタイプの商標」の商標出願でも、特許庁に納める印紙代の金額は、通常の商標出願と同じです。
音商標(新しいタイプの商標①)
「新しいタイプの商標」の1つが、音商標です。
音商標とは、音楽、音声、自然音などからなる商標で、つまり、聴覚で認識される商標です。
今まで、視覚で認識できるものしか、商標法で保護できませんでしたが、聴覚で認識できる商標も、保護対象になりました!
2024年5月21日の時点で、公開データベース「J-PlatPat」で検索すると、今までに出願された音商標の件数は、764件です。
5つの「新しいタイプの商標」の中で、最も商標出願されているのが、音商標です。
CMなどに使われるサウンドロゴやパソコンの起動音が音商標に該当します。
フレーズ(歌詞)がある音商標の登録例
例えば、電子マネー「WAON」を使ったときに流れる音は、登録商標です。
また、久光製薬社が自社CMで使用しているサウンドロゴも、登録商標です。
分かりにくいですが、五線譜で表すと、以下の通りになります。
特許庁データベースで、実際に登録になった音商標を聴くことができます。
対象の登録番号のURLから、登録番号をクリックして、次のページの「音声再生」をクリックしましょう。
音楽的要素だけでの音商標の登録例
音楽的要素(メロディー、ハーモニー、リズム又はテンポ、音色など)だけでも、商標登録を取得できます。
例えば、大幸薬品社・インテル社・BMW社が、このような音商標の商標登録を保有しています。
音ファイルも入手できましたので、五線譜とともに紹介します。
このように、音楽的要素に特徴がある場合には、音商標の商標出願を検討してみましょう。
「J-PlatPat」というデータベースを利用すれば、簡単に、出願中もしくは登録済の音商標を検索できます。
まずは、オンラインデータベース「J-PlatPat」にアクセスしてください。
データベースの「商標」の項目から、「商標検索」を選択します。
例えば、特定の会社の音商標を調べたい場合、「出願人/権利者/名義人」を入力して、「検索」ボタンをクリックしましょう。
そうすると、保有商標の一覧が表示されます。
しかし、大企業の場合、商標の件数が多く、その中から、音商標を探すのも、大変です。
「検索オプション」で、商標の種類を限定できる!
「検索オプション」を利用すれば、音商標に限定できて、便利です。
具体的には、「検索オプション」のタブを開き、「商標のタイプ」の項目で、「音商標」を選択します。
この状態で、「検索」ボタンをクリックすれば、音商標に限定できます。
なお、検索オプションを利用すれば、音商標以外の「新しいタイプの商標」についても、限定して、商標検索できます。
データベースを利用すれば、無料で簡単に出願商標・登録商標をチェックできます
色彩のみからなる商標(新しいタイプの商標②)
2015年4月1日に、色彩のみからなる商標が商標法の保護対象に追加されました。
色彩のみからなる商標とは、単色又は複数の色彩(カラー)の組合せのみからなる商標です。
例えば、商品の包装紙や広告用の看板に使用される色彩などが該当します。
2024年5月21日の時点で、、公開データベース「J-PlatPat」で検索すると、今までに出願された色彩のみからなる商標の件数は、576件になります。
そのうち、商標登録の件数は、たった11件に過ぎません。
審査のハードルは高く、現状、日本で著名であることを証明しないと、商標登録できません
厳しい審査を通過して、商標登録になった商標は、いずれも、誰もが知るような、有名なものです。
以下、色彩のみからなる商標の登録例の一例です。
誰もが、あなたの事業を思い浮かべるほど、有名になれば、色彩のみからなる商標の商標出願のチャレンジを検討してみましょう。
動き商標(新しいタイプの商標③)
2015年4月1日に、商標法の保護の対象が広がり、動き商標が保護対象に追加されました。
動き商標とは、文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標です。
例えば、テレビやコンピューター画面等に映し出される変化する文字や図形が該当します。
2024年5月21日の時点で、、公開データベース「J-PlatPat」で検索すると、今までに出願された動き商標の件数は、259件です。
文字や図形が特徴的に動いたり、表示されたりする場合、動き商標での出願が考えられます
ワコール社の動き商標の登録例
以下のように、ワコール社は、図形が花びらのように開く動きについて、動き商標の商標登録を取得しています。
ライオン社の動き商標の登録例
図形がなくても、動きの商標登録を取得できます。
例えば、以下の通り、ライオン社は、「今日を愛する。LION」の文字が浮かび上がってくる動きについて、商標登録しています。
あなたが提供する商品やサービスのCMで、文字や図形が特徴的な動きをする場合、動き商標の商標出願を検討しましょう。
ホログラム商標(新しいタイプの商標④)
2015年4月1日に、ホログラム商標も商標法の保護対象に追加されました。
ホログラム商標とは、文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標です。
つまり、見る角度によって変化して見える文字や図形が該当します。
2024年5月21日の時点で、、公開データベース「J-PlatPat」で検索すると、今までに出願されたホログラム商標の件数は、21件です。
クレジットカード会社などの金融関連の会社の商標登録例
クレジットカード会社などの金融関連の会社が、自社カードに使用するホログラムを商標出願しているケースが多いです。
例えば、ジェーシービー社は、以下のような商標登録を保有しています。
また、以下のような三井住友カード社のホログラム商標の登録例もあります。
金融関連ではない会社の商標登録例
もちろん、カードに使用されていないホログラムでも、商標登録を取得できます。
例えば、宝ホールディングス社は、温度変化で、お酒の飲み頃を示すホログラムの商標を登録しています。
あなたが提供する商品やサービスで、特徴的なホログラムを使用する場合、ホログラム商標の商標出願を検討しましょう。
位置商標(新しいタイプの商標⑤)
2015年4月1日に、位置商標も商標法の保護対象になりました。
位置商標とは、図形などの商標であって、商品等に付す位置が特定される商標です。
分かりにくいので、特許庁が示している例を挙げます。
以下、「包丁の柄の中央部分の周縁に図形を付した例」及び「ゴルフクラブ用バッグの側面下部に図形を付した例」です。
2024年5月21日の時点で、公開データベース「J-PlatPat」で検索すると、今までに出願された位置商標の件数は、666件です。
カップヌードルの位置商標の登録例
例えば、日清食品ホールディングス社は、カップヌードルについて、以下の位置商標の商標登録を取得しています。
なお、上記の登録商標のうち、包装の破線は、商品の形状の一例を示したものです。
商標を構成する要素ではありません。
プーマ社の位置商標の登録例
スポーツ用品メーカーのプーマ社は、以下のような位置商標の商標登録を保有しています。
こちらも、破線は、商品の形状の一例を示したものです。
商標を構成する要素ではありません。
コンバース(CONVERSE)の位置商標の登録例
文字付きでも、位置商標の商標登録を取得できます。
例えば、伊藤忠商事社は、スニーカーの「コンバース」(CONVERSE)について、以下の位置商標の商標登録を取得しています。
なお、履物の側面の後方に付された円形図形が、登録商標です。
あなたが販売する商品で、特定の場所に付されている図形・デザインに特徴があれば、位置商標の商標出願を検討しましょう。
新しいタイプの商標で分からなければ、特許庁や商標専門の弁理士に相談!
新しいタイプの商標で分からないことがあれば、特許庁に問い合わせましょう。
また、商標専門の弁理士への相談も考えられます。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・2015年4月1日に、商標法の保護の対象が広がり、新しく保護できるようになった商標を、総称して「新しいタイプの商標」と言います
・具体的には、音商標、色彩のみからなる商標、動き商標、ホログラム商標、位置商標の5つです
・これら5つの新しいタイプの商標を、登録例とともに、それぞれ簡単に紹介しました。ちなみに、特許庁に納める印紙代の金額は、通常の商標出願と変わりません