「あずきバー」は、大人気のアイスクリームです。
井村屋は、計画的な商標戦略で、「あずきバー」の商標登録を取得しました。
弁理士歴10年以上の商標専門の弁理士が、「あずきバー」関連の商標戦略を紹介します。
この記事から、特徴がない(専門的に言うと「識別力を有さない」)商標に対して、どのように対応すべきか、学べます。
また、他社の優れた商標戦略を知ることができます。
アイスクリーム「あずきバー」について
アイスクリームの「あずきバー」を知っていますか?
「あずきバー」は、井村屋株式会社が販売する大人気のアイスクリームです。
あなたも、一度は、食べたことがあるかと思います。
2021年度には、シリーズ累計販売本数が3億本を突破していて、多くの人に愛されている商品です。
「あずきバー」、有名ですよね
「あずきバー」は、井村屋社が、長年、販売している大人気のアイスクリームです
商標「あずきバー」は、本来的には、識別力(商標としての特徴)がない!
そもそも、商標「あずきバー」は、識別力(商標としての特徴性)があるでしょうか?
識別力(商標としての特徴性)とは、他社の商品・サービスと区別するための能力です!
「あずきバー」のうち、「あずき」部分は、商品(アイスクリーム)の原材料を表示しているに過ぎません。
また、「バー」部分は、棒状の商品を意味しているに過ぎません。
よって、商標「あずきバー」は、「小豆(あずき)を使用した棒状の商品」程度の意味合いしか生じません。
商標「あずきバー」は、商品の内容表示に過ぎないので、識別力(商標としての特徴性)を有しません。
「あずきバー」って、本来的には、商標登録できないんですか?
そうです!実際、2005年に、標準文字で商標「あずきバー」を出願しましたが、特許庁の審査で、識別力を有さないとして拒絶されています!
商標登録のための「あずきバー」の有効な商標戦略!
「あずきバー」は、井村屋の主力商品です。
井村屋は、どうにか商標登録で「あずきバー」を保護したかったのでしょう。
このような識別力が弱い、もしくは、識別力を有さない商標に対して、井村屋は、有効な商標戦略を取っています。
特徴のある文字や図形を出願商標に含めることで、識別力の問題を回避!
デザイン化されていることで、文字商標よりも、登録になりやすい!
全国的に著名であれば、例外的に商標登録できる!
まずは、パッケージデザインとして、2件、商標出願しました。
その結果、以下の2件の商標登録を取得しました。
パッケージのデザインには、「あずきバー」の文字以外にも、「井村屋」の文字などが含まれています。
特徴のある文字や図形を出願商標に含めることで、識別力の問題を回避できます。
まずは、このような商標登録を取得することで、パッケージデザインの使用を商標登録でカバーできます。
さらに、他社の「あずきバー」の使用も牽制できます。
その後、多少、デザイン化された以下の「あずきバー」の商標を出願しました。
審査段階では、識別力を有さないと判断されたので、拒絶査定不服審判まで、争いました。
その結果、「あずき」と「バー」の文字の配置と文字の大きさの違いなどに特徴があるとして、商標登録になりました。
最後に、標準文字の商標「あずきバー」を、再度、出願しました。
識別力のない商標でも、全国的に著名であれば、商標法3条2項により、特例的に商標登録になります。
今度は、日本国内での「あずきバー」の著名性の獲得が認められました。
その結果、無事に商標登録になりました。
最終的に、井村屋社は、以下の順で、「あずきバー」関連の商標登録を取得しています。
- (2005年9月22日に登録)
- (2005年9月22日に登録)
- (2012年6月29日に登録)
- あずきバー(2013年5月10日に登録)
様々なバリエーションの「あずきバー」の商標登録がありますね
井村屋社は、識別力が認められやすい態様から、戦略的に商標登録を取得しました!
「あずきバー」から学ぶ!識別力の弱い商標への有効なアプローチ
「あずきバー」の事例は、識別力の弱い商標へのアプローチの1つとして、大変、参考になります。
文字商標として商標登録を取得するのが、権利範囲が最も広いです。
しかし、識別力の弱い商標については、文字商標での商標登録がなかなか難しいです。
そこで、以下の商標戦略が、有効です。
特徴のない商標でも、全国的に有名になれば、商標登録できるんですね
そうです!ハードルは高いですが、著名性を立証できれば、例外的に商標登録できます
なお、以下の記事で紹介していますが、明治のヨーグルト「R-1」も、同様の商標戦略を取っています。
まずは、「R-1」の文字を含んだロゴ・図形で、商標登録を取得しました。
その後、「R-1」の文字商標の出願にチャレンジしました。
その結果、「R-1」の文字の商標登録を取得できました。
商標戦略で迷うことがあれば、商標専門の弁理士に相談しよう!
商標戦略で迷うことがあれば、経験のある商標専門の弁理士が頼りになります。
筆者(すみや商標知財事務所)にご連絡いただければ、一緒に、商標戦略を検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・文字商標「あずきバー」は、「小豆を使用した棒状の商品」を意味するので、商品の内容表示に過ぎません。本来的には、識別力が弱く、商標登録できません
・井村屋社は、まずは、他の文字や図形と組み合わせることで、商標登録を取得しました
・その後、日本国内での著名性を証明することで、「あずきバー」の文字商標での商標登録も取得できました