「あずきバー」はなぜ商標登録できた?識別力の壁を超えた戦略的アプローチ

「あずきバー」と聞くと、誰もがすぐにイメージできる商品名ですが、実はこの名前は商品の内容を直接表しているため、本来的には商標登録が難しいです。

ところが、井村屋社は単に「あずきバー」の文字商標を出願するだけでなく、パッケージデザインやロゴ化された文字など段階的に商標登録して、最終的には著名性を認められ、文字商標の登録に成功しました。

本記事では、そんな「あずきバー」の商標登録に至るまでの巧みな段階的戦略と、商標法の重要ポイントをわかりやすく解説します。

商標登録でお悩みの方や、識別力の問題に直面している方にとって参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

以下のような人に読んでほしい!

他社の商標戦略を学びたい人

特徴がない(識別力を有さない)商標を商標登録したい人

あずきバーが大好きな人

記事の信頼性
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すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています

・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています

多くのお客様に商標戦略をアドバイスしています

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アイスクリーム「あずきバー」について

アイスクリームの「あずきバー」を知っていますか?

(井村屋株式会社の公式ホームページより)

「あずきバー」は、井村屋株式会社が販売する大人気のアイスクリームです。

あなたも、一度は、食べたことがあるかと思います。

2021年度には、シリーズ累計販売本数が3億本を突破していて、多くの人に愛されている商品です。

初心者くん
初心者くん

「あずきバー」、有名ですよね

虎さん
虎さん

「あずきバー」は、井村屋社が、長年、販売している大人気のアイスクリームです

商標「あずきバー」は、本来的には、識別力(商標としての特徴)がない!

そもそも、商標「あずきバー」は、識別力(商標としての特徴性)があるでしょうか?

虎さん
虎さん

識別力(商標としての特徴性)とは、他社の商品・サービスと区別するための能力です!

「あずきバー」のうち、「あずき」部分は、商品(アイスクリーム)の原材料を表示しているに過ぎません。

また、「バー」部分は、棒状の商品を意味しているに過ぎません。

よって、商標「あずきバー」は、「小豆(あずき)を使用した棒状の商品」程度の意味合いしか生じません

商標「あずきバー」は、商品の内容表示に過ぎないので、識別力(商標としての特徴性)を有しません

初心者くん
初心者くん

「あずきバー」って、本来的には、商標登録できないんですか?

虎さん
虎さん

そうです!実際、2005年に、標準文字で商標「あずきバー」を出願しましたが、特許庁の審査で、識別力を有さないとして拒絶されています

商標登録のための「あずきバー」の有効な商標戦略!

「あずきバー」は、井村屋の主力商品です。

井村屋は、どうにか商標登録で「あずきバー」を保護したかったのでしょう。

このような識別力が弱い、もしくは、識別力を有さない商標に対して、井村屋は、有効な商標戦略を取っています。

Step 1
「あずきバー」のパッケージデザインの商標出願

特徴のある文字や図形を出願商標に含めることで、識別力の問題を回避!

Step 2
多少、デザイン化された「あずきバー」の文字の商標出願

デザイン化されていることで、文字商標よりも、登録になりやすい!

Step 3
「あずきバー」の標準文字の商標出願

全国的に著名であれば、例外的に商標登録できる!

【Step 1】「あずきバー」のパッケージデザインの商標出願

まずは、パッケージデザインとして、2件、商標出願しました。

その結果、以下の2件の商標登録を取得しました。

商登第4896332号
商登第4896333号

パッケージのデザインには、「あずきバー」の文字以外にも、「井村屋」の文字などが含まれています。

特徴のある文字や図形を出願商標に含めることで、識別力の問題を回避できます。

まずは、このような商標登録を取得することで、パッケージデザインの使用を商標登録でカバーできます。

さらに、他社の「あずきバー」の使用も牽制できます

【Step 2】多少、デザイン化された「あずきバー」の文字の商標出願

その後、多少、デザイン化された以下の「あずきバー」の商標を出願しました。

商登第5503451号

審査段階では、識別力を有さないと判断されたので、拒絶査定不服審判まで、争いました。

その結果、「あずき」と「バー」の文字の配置と文字の大きさの違いなどに特徴があるとして、商標登録になりました。

【Step 3】「あずきバー」の標準文字の商標出願

最後に、標準文字の商標「あずきバー」を、再度、出願しました。

商登第5580635号

識別力のない商標でも、全国的に著名であれば、商標法3条2項により、特例的に商標登録になります。

今度は、日本国内での「あずきバー」の著名性の獲得が認められました

その結果、無事に商標登録になりました。

最終的に、井村屋社は、以下の順で、「あずきバー」関連の商標登録を取得しています。

  • (2005年9月22日に登録)
  • (2005年9月22日に登録)
  • (2012年6月29日に登録)
  • あずきバー(2013年5月10日に登録)
初心者くん
初心者くん

様々なバリエーションの「あずきバー」の商標登録がありますね

虎さん
虎さん

井村屋社は、識別力が認められやすい態様から、戦略的に商標登録を取得しました!

「あずきバー」から学ぶ!識別力の弱い商標への有効なアプローチ

「あずきバー」の事例は、識別力の弱い商標へのアプローチの1つとして、大変、参考になります

文字商標として商標登録を取得するのが、権利範囲が最も広いです。

しかし、識別力の弱い商標については、文字商標での商標登録がなかなか難しいです。

そこで、以下の商標戦略が、有効です。

識別力の弱い商標への有効なアプローチ

まずは、他の文字や図形と組み合わせて、識別力の問題を回避し、商標登録の取得を優先

 

その後、日本国内で商標を使用して、広く知れ渡ったら、文字商標の出願のチャレンジを検討

初心者くん
初心者くん

特徴のない商標でも、全国的に有名になれば、商標登録できるんですね

虎さん
虎さん

そうです!ハードルは高いですが、著名性を立証できれば、例外的に商標登録できます

なお、以下の記事で紹介していますが、明治のヨーグルト「R-1」も、同様の商標戦略を取っています

「R-1」はなぜ商標登録できた?識別力の壁と明治のブランド戦略

まずは、「R-1」の文字を含んだロゴ・図形で、商標登録を取得しました。

その後、「R-1」の文字商標の出願にチャレンジしました。

その結果、「R-1」の文字の商標登録を取得できました。

本記事のまとめ

・文字商標「あずきバー」は、「小豆を使用した棒状の商品」を意味するので、商品の内容表示に過ぎません。本来的には、識別力が弱く、商標登録できません

・井村屋社は、まずは、他の文字や図形と組み合わせることで、商標登録を取得しました

・その後、日本国内での著名性を証明することで、「あずきバー」の文字商標での商標登録も取得できました

商標戦略で迷うことがあれば、商標専門の弁理士に相談しよう!

各社によって、商標戦略が違うので、どのような商標戦略を採用すべきか、迷うです。

商標戦略で迷うことがあれば、商標専門の弁理士を頼りましょう。

筆者(角谷 健郎)に相談いただければ、一緒に検討します。

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