お客様から頻繁に受ける質問があります。その1つが、「商標登録する区分を追加できないか?」です。
弁理士歴13年以上の商標専門の弁理士が、商標に関する質問にお答えします。
結論から言えば、原則、商標登録の区分を追加できません。この記事では、その理由や代替策などを教えます。

・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています
・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています
・膨大な量の商標登録に関する質問に回答してきました
・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です
商標登録の区分の追加を希望することは多い
商標登録の区分の希望するお客様は多いです。
例えば、以下のような理由で、商標登録の区分の追加を希望することがあります。
- 業務の拡大により、現在の商標登録では、カバーしきれなくなった
- 商標出願に想定していなかった商品・サービスにも、登録商標を使用している

商標登録の区分の追加のニーズは、高いんですね

当初の想定と違って、事業を展開していくことは多々あります。そのため、既存の商標登録では、現状の業務をカバーできなくなります
商標登録の区分の追加は、原則、認められない!
残念ながら、商標登録の区分の追加は、原則、認められません。
なお、「商標登録になる前」と「商標登録になった後」によって、指定商品・役務が補正できるか、異なります。
指定商品・役務を補正できますが、以下のような補正に限定されます。
- 指定商品・役務の削除
- 権利範囲を狭める補正(例えば、「被服」→「Tシャツ」に補正)
- 不明確な指定商品・役務の表示を明確にする補正
一方、権利範囲を変更する・拡大する補正は、認められません。
商標登録の区分の追加は、基本的には、権利範囲を変更・拡大する補正に該当します。
よって、商標登録の区分を追加する補正は、原則、認められません。
商標登録になった後は、指定商品・役務を変更できません。
よって、商標登録になった後は、いかなる場合でも、商標登録の区分を追加できません。

商標登録したら、原則、指定商品・役務を変更できませんが、商標権の一部放棄により、指定商品・役務の削除だけはできます
例外的に、商標登録の区分が追加できる場合とは
区分が間違っている場合には、例外的に、商標登録の区分を追加できます。
商標登録の区分が追加できる具体例
例えば、5類で「サプリメント,洋服」を指定して、商標出願したとします。
しかし、「洋服」は5類ではなく、25類の商品です。
このような場合、例外的に、商標登録の区分を追加できます。
具体的には、「洋服」を25類に変更して、指定商品を5類「サプリメント」及び25類「洋服」に補正できます。

区分の追加が認められるのは、商標登録する区分を間違えたため、修正する場合だけです
商標登録の区分が追加できなかった場合の代替策(新規の商標出願)
商標登録の区分が追加できないことは、よくあります。
代替策として、新規に登録商標を商標出願しています。
新規に商標出願する場合、以下の点に注意しましょう。
- 同一もしくは類似の商標登録がないか、事前に確認する
- 商標登録の管理の手間が増える
自分が商標登録を保有していても、他区分に同一もしくは類似の商標登録が存在する危険性があります。
商標出願する前に、できれば、商標登録をチェックしましよう。
なお、先行商標の調べ方は、以下の記事で紹介しています。

なお、弁理士に商標調査をお願いしたいとのことであれば、筆者(すみや商標知財事務所)にご依頼ください。
商標登録になったら、そこで終わりではありません。
存続期間は、登録日から10年間なので、忘れずに、更新手続きできるよう、きちんと商標登録を管理する必要があります。
同じ登録商標を2件管理することになり、商標登録の管理の手間が増えます。
商標登録の区分が追加できないので、初めから、多数の区分をカバーすべきか?
商標登録の区分が追加できないから、初めから、多数の区分をカバーしようとするお客様もいらっしゃいます。
しかし、筆者は、そのような考えには、否定的です。
その理由は、主に以下の2つです。
- 区分数を増やすと、費用が高額になる
- 使用していない商品・サービスは、不使用取消審判によって、取り消されるリスクがある
商標登録に掛かる費用は、区分の数で決まります。
1区分、増えるだけで、特許庁に支払う費用(印紙代)が、数万円、増額します。
さらに、弁理士に依頼した場合、弁理士の報酬も、区分数によって、決まります。
1区分、追加すると、弁理士に支払う費用も、数万円、増額するでしょう。

筆者(すみや商標知財事務所)の場合、1区分、増えると、事務所の手数料が3万円(税抜)増えます
3年以上、登録商標を使用していないと、商標登録を取り消す制度(不使用取消審判)が存在します。
不使用取消審判については、詳しくは、以下の記事で紹介しています。

よって、多数の区分をカバーして商標登録して、一部の商品・サービスについて、登録商標を使用していなかったとします。
その場合、使用していない商品・サービスについては、不使用取消審判によって、取り消される危険性があります。
商標登録の区分のよくある質問(FAQ)
以下は、読者の方が迷いがちな「商標登録の区分」の実務上の疑問に対して、簡潔に答えたFAQです。
記事本文と合わせてご活用ください。
間違った区分で商標登録しても、本来守りたかった商品やサービスを保護できません。
必要な区分に商標権が及ばないと、他社に使用されても法的に止められないリスクがあります。
はい、可能です。ただし、区分ごとに費用が加算されます。
実際に必要な範囲に絞るのがポイントです。
本記事で説明した通り、原則、商標登録後に区分を追加・変更することはできません。
別途、新たに商標出願する必要があります。
使用している商品・サービス内容をもとに、区分を選ぶ必要があります。
判断に迷ったら、専門家(できれば商標専門の弁理士)の助言を受けるのが安全です。
区分が異なれば、商標の使用が許されて、商標登録できる場合もあります。
詳しくは、以下の記事で解説しています。

実際には、類似商品・役務審査基準を参照する人が多いです。
商標登録の区分の決め方については、以下の記事で、紹介しています。

なお、判断に迷ったら、専門家(できれば商標専門の弁理士)に相談しましょう!
飲食サービス(第43類)だけでなく、Tシャツ(第25類)やグッズ(第21類)など展開商品に応じた区分も検討が必要です。
キャラクターの商標登録の区分については、以下の記事で解説しています。

はい、関係します。ネットで販売する「商品」の内容に応じて区分が決まります。
つまり、販売場所ではなく、提供するモノ・サービスの本質で判断します。
【まとめ】分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談!
・業務の拡大などにより、既存の商標登録では、現状の業務をカバーできなくなることが多々あります。商標登録の区分を追加したいというニーズは高いです
・残念ながら、商標登録の区分は、原則、追加できません。代替策が、登録商標の新規出願です
・商標登録を保有していても、他区分に同一もしくは類似の商標登録が存在する危険性があります。新規に商標出願する前に、念のため、先行商標をチェックしましょう
商標関連の手続きで分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。

筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。