・利害関係人に限り、商標登録後に、無効審判を請求することができます
・ただし、5年間の除斥期間が経過すると、請求の根拠とする無効理由が制限されるので、注意が必要です
・無効審判は当事者対立構造を採用していて、また、口頭での審理も行われます
無効審判の目的(商標登録に瑕疵(欠陥)がある可能性)
あなたは、商標登録の無効審判制度を知っていますか?
特許庁の審査官もミスすることはあり、商標登録に瑕疵(欠陥)がある可能性があります。
このような場合、権利を無効とする必要がありますので、そのために設けられたのが無効審判制度になります。
無効審判の請求があれば、特許庁において、対象の商標登録に無効理由がないか、審理を行います。
それでは、無効審判制度の概要について、説明していきます。
商標登録の無効審判の概要
商標登録の無効審判の請求人
無効審判を請求できるのは、利害関係人に限られます。
例えば、登録商標と同一もしくは類似する商標を使用している者などです。
商標登録の無効審判の請求期間
また、無効審判は、商標権の消滅後でも、請求することができます。
ただし、登録日から5年を経過すると、商標法3条などの規定に違反していることを理由に、無効審判を請求できなくなりますので、注意しましょう。
この5年の期間を除斥期間と言います。
商標登録の無効審判の請求方法
無効審判を請求するためには、以下のような審判請求書を特許庁に提出する必要があります。
また、特許庁ホームページに、無効審判請求書の作成要領も掲載されているので、ご参考ください。
商標登録の無効審判の請求理由
商標登録の無効審判の請求理由は、商標法46条1項各号に列挙されていて、これらに限定されます。
例えば、無効審判の請求理由は、以下の通りです。
- 登録商標が、商標としての特徴(識別力)がない【商標法3条違反】
- 先行の登録商標もしくは出願商標と抵触する【商標法4条1項11号違反】
- 商標出願により生じた権利を承継しない者が商標出願している【冒認出願】
- 後発的に不登録事由に該当する
商標登録の無効審判に掛かる費用
特許庁に支払う印紙代は、無効審判を請求する商標登録の対象の区分の数で、決まります。
1区分目が5万5千円で、2区分目~は、1区分ごとに4万円です。
また、弁理士などの専門家に依頼すると、専門家に支払う手数料も掛かります。
商標登録の無効審判の効果
商標登録を無効にする旨の審決が確定したら、商標権は初めから存在しなかったものとみなされます。
なお、後発的に無効理由に該当する場合、該当した時点から商標権が消滅します。
後発的に無効理由に該当した時点を特定できない場合には、審判請求登録の日から消滅します
商標登録の無効審判における審理の流れ
無効審判は、当事者が対立する構造で、また、統計データによると、無効審判の標準的な審理期間は、11~14ヵ月です。
無効審判が請求されたら、商標権者に請求書の副本が送達され、商標権者に反論の機会が与えられます。
期間内に答弁書を提出でき、その後、口頭での審理に進みますので、特許庁に出頭します。
審判請求人は弁駁書を提出し、一方、商標権者は答弁書を提出して、議論します。
事件が熟したと審判官が判断したら、審理終結を通知して、その後、審決(審判の結果)を両当事者に送達します。
なお、審決に不服があれば、訴訟を提起して、争うことができます。
商標登録の無効審判の勝算について
特許庁の公開データによると、2021年に最終処分が出た無効審判の件数は、98件あります。
なお、9件は、結論が出る前に、取り下げ・放棄されています。
その中で、無効審判の請求が成功した件数が27件だったのに対して、無効審判の請求が失敗した件数(却下を含む)は、62件になります。
統計的に判断すると、無効審判の勝算は、決して、高くはありません。
ただし、異議申し立てに比べれば、統計上、商標登録を取り消せる可能性があります。
なお、異議申し立てについては、以下の記事をご参照ください。
【商標登録の異議申し立て】制度の概要や流れを紹介!商標登録の無効審判で分からなければ、商標専門の弁理士に相談!
実際、無効審判を請求しようとすると、分からないことも出てくるでしょう。
そのような場合には、商標専門の弁理士に相談しましょう。
筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
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