商標権侵害でも損害賠償がゼロ?「小僧寿し」事件をわかりやすく解説

「他社にロゴを真似されたけれど、うちが使っていなかったら損害賠償は請求できないの?」

「他社から突然『商標権侵害だ』と警告された…高額な損害賠償を払わなければいけないの?」

ビジネスを運営する中で、このような商標トラブルや不安に直面する経営者の方は少なくありません。

通常、「商標権侵害=高額な損害賠償金」と思われがちです。

しかし過去には、形式的には商標権侵害でありながら損害賠償額が「0円」と判断された異例の裁判(小僧寿し事件)が存在します。

本記事では、商標専門の弁理士が「小僧寿し事件」の概要と裁判所の判断理由を分かりやすく解説!

さらに、この判例から経営者が学ぶべき2つの教訓と、実務上に潜む本当のリスクをお伝えします。

自社のブランドを守りたい方、他社からの警告に焦っている方は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、本記事を2分の動画にまとめたので、併せて、ご活用ください。

記事の信頼性
記事の信頼性

・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています

・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています

・商標に関する重要判例を、全て、チェックしています

・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です

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【業界では珍しい「商標専門」の弁理士】

「小僧寿し」事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、最高裁判所第三小法廷の平成6年(オ)第1102号の判決、いわゆる「小僧寿し」事件の判例を紹介します。判決文は、こちら。

まず、事件の概要を説明すると、以下の商標登録を保有する登録権者が、本件の上告人です。

(登録第505891号)

これに対して、被上告人は、フランチャイズ契約により、全国的に「小僧寿し」という名称の持ち帰り寿司店を展開していました。

(小僧寿しの公式ホームページより)

被上告人は、「小僧寿し」「KOZOSUSHI」「KOZOSUSI」「KOZO ZUSHI」「KOZO」等の商標を使用していました。

上告人が、上記の商標登録に基づいて、被上告人に対して、損害の賠償を求めたのが、本件です。

虎さん
虎さん

最高裁判所まで争った商標業界では有名な裁判例(判例)です!

「小僧寿し」事件における裁判所の判断

小僧寿しの使用商標が、登録商標「小僧」と類似するか?

初心者くん
初心者くん

当時、「小僧寿し」は、有名でしたよね?

虎さん
虎さん

はい、被上告人は、当時、外食産業において上位の売上高を誇り、商標「小僧寿し」は、一般需要者の間で広く認識されていました!

被上告人の商標の著名性を勘案して、「小僧寿し」「KOZOSUSHI」などの商標は、全体が不可分一体のものであるとして、登録商標「小僧」とは区別できると判断しました。

一方、「コゾウ」の称呼が生じる「KOZO」などの商標については、登録商標と類似すると認められました。

被上告人の行為により、損害が発生しているか?

初心者くん
初心者くん

この裁判の争点が知りたいです

虎さん
虎さん

この裁判では、損害が発生しているか否か、争われました!

上告人は、大阪市を中心とする近畿地区において「おにぎり小僧」の名称のおにぎり・すし等の製造販売を始めました。

しかし、被上告人やその傘下の加盟店の店舗の所在する四国地域では、本件商標を使用したおにぎり・すし等を販売した実績がありませんでした。

この事実や被上告人の商標の著名性を勘案して、裁判所は、以下のように、判断しました。

  • 登録商標は、四国地域において全く使用されておらず、一般需要者の知名度がない
  • 登録商標には、業務上の信用が化体されていなく、顧客吸引力が殆どなかった
  • 上告人の販売する商品の売り上げにつき損害が生じていない
  • ライセンス料のような、本件商標権につき得べかりし利益の喪失による損害も何ら生じていない

よって、損害が発生していないとして、損害賠償の請求が認められませんでした。

虎さん
虎さん

いわゆる「損害発生の抗弁」が認められた画期的な事例です!

「小僧寿し事件」から経営者が学ぶべき「2つの教訓」

形式的には商標権の侵害でありながら、損害賠償額が「0円」と判断された小僧寿し事件。

この異例の最高裁の判決は、ビジネスを行うすべての経営者に対して2つの重要な教訓を示しています。

教訓①【権利者側】商標権を持っていても、必ず損害賠償が取れるとは限らない

1つ目は、「商標権を侵害されたからといって、絶対に相手から賠償金を獲得できるわけではない」という点です。

「商標登録さえしておけば、真似した相手から損害賠償を取れる」と考えがちです。

しかし、ブランド力(顧客吸引力)が全くなかったりする場合など、相手方に「損害不発生の抗弁」を主張され、請求が退けられてしまうリスクがあります。

虎さん
虎さん

権利を取得して満足するのではなく、「自社ブランドとして育て、価値を高めていくこと」が重要です!

教訓②【訴えられた側】「損害不発生の抗弁」により、賠償金の支払いを回避できる可能性がある

2つ目は、訴えられた側(侵害を指摘された側)の視点です。

万が一、他社から「商標権侵害だ」と訴えられた場合でも、必ずしも、賠償金を支払う必要はありません。

相手方の商標に知名度や顧客吸引力がなく、損害が発生していないことを証明できれば、「損害不発生の抗弁」によって賠償金の支払いを回避できる可能性があります。

虎さん
虎さん

突然の警告状が届いてもパニックにならず、登録商標の使用実態や自社の売上背景を精査することが防衛の一手です!

【重要】実務では「損害不発生」が認められるケースは極めて稀!頼るのは危険

「小僧寿し事件があるなら、他社の商標を少し真似しても『損害は発生していない』と主張すれば大丈夫では?」と思ってしまうかもしれません。

しかし、結論からお伝えするとその考えは非常に危険です。

裁判で「損害不発生」が認められるのは極めて例外的

実務上、商標権侵害の裁判において「損害不発生の抗弁」が認められた判例はほとんど存在しません。

小僧寿し事件は、原告商標の知名度の低さと、被告(小僧寿し)側の圧倒的な全国的営業努力という極めて特殊な条件が重なったからこそ成立した「奇跡的な例外ケース」です。

通常の裁判で「損害は出ていない」と主張しても認められないケースが圧倒的多数です。

虎さん
虎さん

基本的には、相手方の請求通り、高額な損害賠償金が命じられるリスクがあると考えておくべきです!

賠償金が「0円」でも、差し止め(ロゴや店名の変更)のリスクは残る

仮に奇跡的に損害賠償が「0円」になったとしても、商標権侵害であること(形式的な侵害)には変わりありません。

そのため、裁判所から「対象のロゴや店名の使用差し止め」を命じられる危険性は高いままです。

・看板や包材、Webサイト、チラシの全面差し替え費用

・これまで育ててきたブランド名を突然失う営業上の損失

このように、賠償金とは別にビジネス継続を揺るがす差し替えコストとブランドダメージが発生する危険性があり、「損害賠償がゼロならノーダメージ」では決してないのです。

損害不発生の抗弁に関する「よくある質問」(FAQ)

以下は、読者の方が迷いがちな実務上の疑問に対して、簡潔に答えたFAQです。

記事本文と合わせてご活用ください。

Q1. 「損害不発生の抗弁」とは何ですか?

商標権侵害が認められた場合でも、実際に損害が発生していないときには、被告が「損害は発生していない」と主張して、損害賠償を免れることができます。

これが「損害不発生の抗弁」です。

つまり、「侵害=必ず損害賠償」というわけではなく、実際の損害の有無が問われるという点が重要です。

Q2. どのような場合に「損害不発生の抗弁」が認められますか?

次のようなケースで認められる可能性があります。

  • 侵害行為によって、権利者の売上・信用が実際には減少していない場合
  • 被告の使用が限定的で、経済的な影響がなかった場合
  • 権利者が商標を使用していなかったため、損害の発生自体が立証できない場合

「小僧寿し」事件でも、侵害は認められたものの、実際の損害が立証されなかったため、賠償は認められませんでした。

Q3. 損害がなくても「差止請求」はできますか?

はい、できます!

損害不発生の抗弁は損害賠償請求に関するものであり、差止請求(侵害の中止・予防)には影響しません。

したがって、実際の損害が立証できなくても、今後の侵害を防ぐための差止請求は可能です。

【まとめ】最大の防衛術は「他人の商標権を侵害しないか、事前にチェックする」

今回は、商標権侵害でありながら損害賠償が「0円」となった「小僧寿し事件」について解説しました。

しかし、「小僧寿し事件があるから大丈夫」と楽観視するのは危険です!

「そもそも他社の商標権を侵害しないこと」「自社の商標を正しい価値で管理・育成すること」が、ビジネスを守る最善の防衛術です。

「新しいサービス名を考えているけれど、他社の商標権に引っかからないか不安…」

「他社から突然、商標権侵害の警告状が届いてどう対応すべきか分からない」

商標トラブルは、裁判になってから対応しようとするとロゴの差し替えコストやブランド価値の失効など、取り返しのつかない打撃につながります。

すみや商標知財事務所では、商標専門の弁理士が事前の緻密な商標調査から、トラブル発生時の防衛アドバイス、自社ブランドの権利化まで一貫してサポートしております。

トラブルが大きくなる前に、ぜひお気軽に弁理士すみや(角谷 健郎)にご相談ください。

事務所HPからもご相談いただけますが、以下のフォームからも簡単にお問い合わせいただけます。

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