・「HOME’S」の単色の色彩商標について、識別力(特別顕著性)の獲得が認められませんでした
・単色の色彩の商標登録のハードルが極めて高いのが現状になります
・単色の色彩の商標出願にチャレンジするのであれば、強力な証拠資料を用意しましょう
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の令和元年(行ケ)第10119号の判決、「HOME’S」色彩商標の判例を紹介します。
あなたは、LIFULL社の提供する不動産ポータルサイト「HOME’S」を利用したことはありますか?
LIFULL社は、以下の単色の色彩商標を出願しましたが、識別力を有さない、簡単に言うと、特徴がないとして拒絶されました。
また、使用によって本願商標が識別力を獲得した旨、主張しましたが、それも認められませんでした。
LIFULL社は、拒絶査定不服審判を請求しましたが、やはり本願商標が識別力を有さないと判断されて、拒絶査定を維持する旨、審決が下されました。
なお、拒絶査定不服審判の請求と同時に、以下の36類の指定役務に限定しています。
インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供
この審決に対しても不服があり、訴訟を提起したのが、本件の裁判になります。
裁判所の判断
あなたなら、この色彩商標の識別力について、どのように判断しますか?
この色彩商標から、LIFULL社の提供する不動産ポータルサイト「HOME’S」を想起しますか?
結論から先に言うと、本件の色彩商標は識別力(特別顕著性)を獲得していないと判断して、裁判所は、原告の請求を棄却しました。
原告のLIFULL社は、自社の不動産ポータルサイトにおいて、イメージカラーとして、本件の色彩商標を使用しています。
しかし、原告のウェブサイトには、本願商標以外の色彩(青、黒、黄色など)も使用されています。
よって、ウェブサイト全体としては、複数の色彩が組み合わされているとの印象を与えると裁判所は判断しました。
本願商標の橙色のみが独立して強調されて、統一的に使用されているとの印象を与えないと裁判所は考えました。
また、テレビCMの一部にも、本願商標が使用している旨、原告は主張しました。
しかし、裁判所は、テレビCMでは、ロゴマークの色彩として本願商標の橙色が表示されているにすぎないと判断しました。
さらに、原告は、本件色彩商標の著名性を立証するための2回のアンケートの調査結果も提出しました。
しかし、アンケート方法が不適切である等の理由により、アンケート調査結果を採用できないと判断しました。
判例から学べること
商標登録を取得できれば、自分が独占的に使用できて、さらに、他者の商標の使用も排除できます。
商標権は、このような強力な権利なので、単色の色彩の商標登録のハードルが極めて高いのが現状になります。
現に、今のところ、単色の色彩商標の登録が認められた例はありません。
単色の色彩の商標出願にチャレンジするのであれば、強力な証拠資料を用意する必要があります。
なお、以下の記事で、色彩商標の登録例を紹介しているので、ご参考ください。