企業も個人も、オリジナルのキャラクターを作成して、自分のビジネスに利用しています。
商標登録で、キャラクターを保護したいというニーズは高く、以下の通り、人気キャラクターは、商標登録しています。
一方で、著作権などの他の知的財産権でも、キャラクターを保護できます。
それでは、コストを掛けてまで、キャラクターの名称や図形をどうして商標登録するのでしょうか?
著作権と商標権、それぞれのキャラクターの保護を比較します。
また、意匠権・不正競争防止法によるキャラクターの保護方法も教えます。
著作権による保護との比較
キャラクター保護と言われて、まずは、著作権を思い浮かべる人が多いでしょう。
実際、キャラクターを保護するには、著作権が有効です。
著作権と商標権、それぞれでのキャラクターの保護を比較します。
著作権の保護対象
著作権は、「著作物」を保護するための権利です。
「著作物」については、著作権法2条1項1号において、以下の通り、明確に規定しています。
思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
よって、イラストや絵本などの制作物は、「著作物」に該当し、その中でキャラクターが登場した場合、著作権で保護されます。
生成AIを利用しても、著作権で保護されますよね?
残念ながら、「思想又は感情」とは人間固有のものですので、生成AIによって作られた画像などは著作物とはなりません
【注意!】キャラクター自体には、著作権は発生しない
著作権による保護対象となるのは、著作権法上で定義された著作物のみです。
つまり、キャラクターの存在自体そのものには著作権が適用されません。
イラストや漫画などの制作物にキャラクターが登場した場合であれば、その具体的な図柄は著作権で保護できます
一方、商標権であれば、キャラクターそのものを保護できます。
【注意!】著作権では、キャラクターの名称は保護できない
他人にキャラクターの名称を真似されると困ります。
しかし、著作権では、キャラクターの名称までは、保護できません。
一方、キャラクター名を商標登録すれば、商標権で保護できます。
著作権は、権利の発生時期が不明確になりがち
著作権は、創作時に、自動的に、権利が発生します。
そのため、権利の発生時期が不明確になりがちです。
一方で、商標権は、特許庁に申請しないと、権利が発生しないと、発生時期が明確です。
著作権は、永久に存続するわけではない
著作権の保護期間は、原則、「著作者の生存している期間+死後70年間」です。
保護期間は、かなり長いですが、著作権が永久に存続するわけではありません。
一方、商標権は、更新し続けることで、半永久的に存続します。
【まとめ】商標権と著作権のキャラクター保護の比較リスト
商標権と著作権のキャラクター保護の違いをリストにまとめると、以下の通りです。
商標権 | 著作権 | |
キャラクター自体の保護 | ||
キャラクターの名称 | ||
権利の発生 | 特許庁への申請が必要 (権利の発生時期が明確) | 創作時に、自動的に生じる (権利の発生時期が不明確なことも) |
保護期間 |
確かに、キャラクターの保護は、著作権が基本になりますが、必ずしも、万能な権利ではないことが分かります。
著作権による保護を補完するために、キャラクターの名称・図形の商標登録が有効です。
意匠権による保護との比較
キャラクターを意匠権で保護することもあります。
実際、以下の通り、キャラクターのデザインを意匠登録している例もあります。
それでは、商標権と対比しつつ、意匠権によるキャラクターの保護を紹介します。
意匠権の保護対象
法律上の定義では、意匠とは、「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」です。
簡単に言えば、意匠法の保護対象は、製品のデザインです。
実際、様々な製品のデザインが意匠登録されています。
すでに公開されているデザインは、原則、意匠登録できない
自動的に意匠登録になるわけではなく、特許庁に願書を提出して、審査を通過する必要があります。
意匠権を取得するためには、新規性・創作非容易性が条件になります。
よって、すでに公開されているデザインは、原則、意匠登録できないので、注意です。
一方、商標登録は、意匠登録と異なります。
すでに公開されていても、同一の分野に、似たような先行商標がなければ、商標登録できます。
意匠登録するためには、物品を特定する必要がある
意匠登録の願書には、「意匠に係る物品」を記載する必要があります。
例えば、キャラクターのフィギュアを販売する予定だとしたら、物品が特定できるので、意匠権での保護が考えられます。
ただし、ホームページでの利用など、物品が特定できない場合には、意匠権での保護は難しいでしょう。
一方、商標登録を取得する場合も、具体的な商品・サービスを指定する必要があります。
なお、同一の区分であれば、商品・サービスをいくつも記載できます。
また、意匠権と異なり、ホームページでの利用など、製品に使用していない場合にも、商標権でカバーできます。
不正競争防止法による保護との比較
不正競争防止法でも、キャラクターを保護できる可能性があります。
不正競争防止法とは、人気商品をそのまま模倣するような「不正競争行為」を禁止する法律です。
なお、著作権や商標権のように、何らかの「権利」を根拠としていません。
不正競争防止法の対象となる行為
キャラクターが有名になり、「顧客吸引力」を有するキャラクターであれば、不正競争防止法に基づき、以下の行為を中止できる可能性があります。
①周知表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)
他人の「商品等表示」として需要者の間で広く認識されているものと同一・類似の商品等表示を使用し、他人の商品または営業と混同を生じさせる行為を禁止しています。
例えば、コメダ珈琲の訴えにより、この規定に基づき、以下の店舗用建物の使用の禁止が認められました。
なお、「商品等表示」は、商品やサービスを識別する「印」で、キャラクターの名称・図形も該当するでしょう。
②著名表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)
他人の著名な商品等表示と同一あるいは類似の表示を使用する行為を禁止しています。
この規定をもとに、著名な商品等表示を保護できます。
例えば、ルイ・ヴィトンの訴えにより、この規定に基づき、以下の製品の製造・販売が中止されました。
キャラクターが有名にならないと、不正競争防止法では保護されにくい
キャラクターを作成したら、無条件で、不正競争防止法で保護されるわけではありません。
そのキャラクターが、広く知れ渡っていたり、著名になれば、保護されます。
つまり、キャラクターが有名にならないと、不正競争防止法による保護は難しいでしょう。
商標権の場合、有名でなくても、他人が同一・類似の商標を使用した場合、権利を行使できます
キャラクターの名称・図形を商標登録したければ、商標専門の弁理士に相談!
キャラクターを作成したら、他人に模倣されないよう、また、他人から訴えられないよう、適切に保護するのが、重要です。
商標権の他に、例えば、著作権などでも、キャラクターを保護できます。
しかし、必ずしも、万能な権利ではないので、キャラクターを厚く保護するためには、キャラクターの名称・図形の商標登録の有効です。
キャラクターの名称・図形を商標登録したければ、商標専門の弁理士に依頼しましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討・対応します!
弁理士歴12年以上の商標専門の弁理士
・キャラクター自体には、著作権は発生せず、また、キャラクターの名称も、著作権では保護できません
・キャラクターの保護は、著作権が基本ですが、キャラクターの保護を厚くするために、キャラクターの名称・図形の商標登録が有効です
・意匠権や不正競争防止法でも、キャラクターを保護できる可能性がありますが、制約があるので、どのような場合に保護できるか、把握しましょう