ビジネス上、会社名は重要で、多くの会社が、自分の会社名を商標登録しています。
商標登録する際に迷うのが、商標登録する区分です。
この記事を読めば、会社名の商標登録における区分の決め方が分かります。
また、他社の商標登録例を提示するとともに、区分を決める際の注意点も教えます。
区分とは、商品・サービスのカテゴリー
商標登録の願書には、区分を記載する必要がありますが、そもそも区分とは何でしょうか?
簡単にいえば、区分は、商品・役務(サービス)の属するカテゴリーです。
区分は、1類~45類で、全部で45個に分かれています。
1類~34類は商品の区分で、35類~45類は役務(サービス)の区分です
各区分の商品・サービスをざっくりと紹介すると、以下のリストの通りです。
1類 | 化学品 | 16類 | 紙、紙製品、事務用品 | 31類 | 生きている動植物 |
2類 | 塗料、着色料 | 17類 | 電気絶縁用などの材料 | 32類 | アルコールを含有しない飲料、ビール |
3類 | 洗浄剤、化粧品 | 18類 | 革、旅行用品、馬具 | 33類 | ビールを除くアルコール飲料 |
4類 | 工業用油、工業用油脂、燃料、光剤 | 19類 | 金属製でない建築材料 | 34類 | たばこ、喫煙用具、マッチ |
5類 | 薬剤 | 20類 | 家具 | 35類 | 広告、事業の管理、小売・卸売 |
6類 | 卑金属、その製品 | 21類 | 家庭用品、化粧用具、ガラス製品 | 36類 | 金融、保険、不動産の取引 |
7類 | 加工機械 | 22類 | ロープ製品、織物用の原料繊維 | 37類 | 建設、設置工事、修理 |
8類 | 手動工具 | 23類 | 織物用の糸 | 38類 | 電気通信 |
9類 | 科学用、電気制御用などの機械器具 | 24類 | 織物、家庭用の織物製カバー | 39類 | 輸送、旅行の手配 |
10類 | 医療用機械器具、医療用品 | 25類 | 被服、履物 | 40類 | 物品の加工その他の処理 |
11類 | 照明用、加熱用などの装置 | 26類 | 裁縫用品 | 41類 | 教育、娯楽、スポーツ、文化活動 |
12類 | 乗物その他移動用の装置 | 27類 | 床敷物、織物製でない壁掛け | 42類 | コンピューター、ソフトウェアの開発 |
13類 | 火器、火工品 | 28類 | 玩具、遊戯用具、運動用具 | 43類 | 飲食物の提供、宿泊施設の提供 |
14類 | 貴金属、宝飾品、時計 | 29類 | 動物性の食品、加工食品 | 44類 | 医療、美容、農業のサービス |
15類 | 楽器 | 30類 | 植物性の加工食品、調味料 | 45類 | 冠婚葬祭、警備、法律のサービス |
区分は、1類~45類の計45個あり、事業内容に応じて、商標登録する区分を決定します。
お客様に商標出願のご依頼を頂いたら、入念にヒアリングして、十分に検討・相談した上で、商標登録する区分を決めています!
「会社名」という商標登録の区分は存在しない!
区分は、商品・サービスのカテゴリーで、商標登録する区分の数によって、費用が変動します。
「会社名」というような区分はありません。
よって、「その商標(会社名)をどのような商品・サービスに使うか」に基づいて区分を決めます。
会社名の場合、基本的には「その会社で取り扱う全ての商品・サービス」について使う可能性があります。
よって、会社で取り扱う商品・サービスを網羅的に商標登録するのが基本です。
サービスを提供している場合、35類~45類で会社名を商標登録
35類~45類が、サービスに関する区分です。
何らかのサービスを提供しているのは、これらの区分から選びましょう。
いくつか、具体例を出しながら、商標登録すべき区分を説明します。
飲食業を営む会社の名称の商標登録の区分(43類)
「飲食物の提供」などが属する43類で、商標登録すべきです。
例えば、以下の通り、飲食業を営む会社が、43類で、自分の会社名を商標登録しています。
- 松屋フーズホールディングス(商登第6170735号)
- (商登第4836447号)
なお、松屋フーズホールディングスは、牛丼チェーンの松屋などを運営しています。
また、コロワイドは、焼肉チェーンの牛角などを運営しています。
クリーニング業を営む会社の名称の商標登録の区分(37類)
「洗濯」や「被服のプレス」が属する37類で、商標登録すべきです。
例えば、「ホワイト急便」の運営会社は、自社の社名「日本さわやかグル-プ」(商登第3043977号)を、37類で商標登録しています。
美容院を営む会社の名称の商標登録の区分(44類)
「散髪」、「頭髪の染毛」や「美容」が属する44類で、商標登録すべきです。
例えば、美容サロンを運営している「株式会社Neolive」は、44類で、「」(商登第4652584号)を商標登録しています。
ホテル業を営む会社の名称の商標登録の区分(43類)
「宿泊施設の提供」が属する43類で、商標登録すべきです。
例えば、リゾートホテルなどを運営している「株式会社星野リゾート」は、43類で、「星野リゾート」(商登第5760347号)を商標登録しています。
商品を販売している場合、1類~34類で会社名を商標登録
1類~34類が、商品に関する区分です。
会社が自社の商品を販売している場合には、これらの区分から選びましょう。
自動車メーカーの会社名の商標登録の区分(12類)
例えば、自動車メーカーの場合、「自動車」が属する12類で商標登録すべきです。
実際、大手自動車メーカーのトヨタ自動車は、12類で、「」(商登第2666249号)を商標登録しています。
アパレル会社の会社名の商標登録の区分(25類など)
ファッション関連アイテムには様々なものがあり、その性質や用途、素材によって、複数の区分に分かれます。
その中でも、アパレル業では、被服、履物、帽子などが含まれる「25類」が、メインの区分です。
その他に、例えば、以下の区分(特に18類)もカバーすることが考えられます。
- 26類(頭飾品 など)
- 3類(香水 など)
- 9類(サングラス、眼鏡 など)
- 14類(時計、身飾品 など)
- 18類(バッグ など)
- 24類(ハンカチ、タオル など)
小売業・卸売業を営んでいる場合、35類で会社名を商標登録
あらゆる商品の小売業・卸売業が、35類に該当します。
よって、他者の商品を販売している場合、35類での商標登録すべきです。
例えば、以下のような場合、35類で、商標登録することが考えられます。
- スーパーやコンビニ
- 家電量販店
- セレクトショップ
- 他社製品を取り扱うオンラインショップ
なお、35類の小売等役務については、以下の記事で詳しく紹介しています。
商標法上の「小売等役務」の概要など、分かりやすく紹介!スーパーやコンビニの運営会社名の商標登録の区分(35類)
スーパーやコンビニなどの運営会社の名称であれば、35類で商標登録します。
実際、以下のようなスーパーの会社名は、35類で商標登録しています。
- ライフコーポレーション(商登第5796233号)
- まいばすけっと(商登第5168772号)
なお、ライフコーポレーションは、スーパー「LIFE」を運営しています。
家電量販店の運営会社名の商標登録の区分(35類)
家電量販店も、基本的には、自社製品を販売せず、他社の家電などを取り扱っています。
そのため、家電量販店の運営会社の名称であれば、35類で商標登録します。
実際、以下のような家電量販店の会社名は、35類でも商標登録しています。
- ヨドバシカメラ(商登第5221117号)
- ビックカメラ(商登第5283329号)
- (商登第5140704号)
なお、上新電機は、家電量販店「Joshin」を運営しています。
セレクトショップの運営会社名の商標登録の区分(35類)
セレクトショップでは、厳選した他社の商品を取り扱っています。
例えば、シップス、ビームス、ユナイテッドアローズなどです。
そのため、セレクトショップの会社名の場合、35類で商標登録すべきです。
他社製品を取り扱うオンラインショップの商標登録の区分(35類)
Amazonや楽天市場のように、他社製品を取り扱うオンラインショップは、多数、存在します。
オンラインによる小売業も、35類に含まれるので、オンラインショップの運営会社の場合も、35類で商標登録すべきです。
例えば、総合ショッピングモール「楽天市場」を運営している楽天グループ株式会社です。
楽天グループ株式会社は、35類などで、商標「楽天グループ」(商登第6521976号)を登録しています。
会社名の商標登録での区分選びの2つの注意点
会社名の商標登録をお手伝いすると、お客様が間違えやすい点があります。
以下、特に間違えやすい点を、2つ紹介します。
- 商品とサービスの区分、どちらもカバーすることもある
- 看板やチラシに店名を書く場合でも、「看板」や「印刷物」をカバーする必要なし
商品とサービスの区分、どちらもカバーする必要があることもあります。
例えば、マクドナルドなど、テイクアウトも行う飲食店の場合です。
店内で飲食できるので、サービスの区分の43類(「飲食物の提供」など)で商標登録すべきです。
一方、テイクアウトして、店外で飲食することもできます。
商品の販売にも該当するので、商品の区分の30類(ハンバーガー)などでも商標登録すべきです。
1件の商標登録で、複数の区分をカバーできるんですね
1件の商標登録で、複数の区分をカバーできます。ただし、区分数が増えれば、その分、商標登録に掛かる費用も増加します
商品とサービスの区分、どちらも商標登録している例
例えば、大手ハンバーガーチェーンのモスバーガーです。
モスバーガーは、店内での飲食の他に、テイクアウトで商品を販売しています。
そのため、以下の通り、「モスバーガー」の商標登録(商登第5408139号)は、サービスの区分の43類の他に、30類などの商品の区分もカバーしています。
- 29類(フライドポテト など)
- 30類(ハンバーガー など)
- 32類(バニラシェーク など)
- 43類(飲食物の提供 など)
名刺や会社案内に会社名を記載します。
その場合、商品「印刷物」を商標登録でカバーすべきでしょうか?
答えは、商標登録でカバーする必要がありません。
「名刺」や「会社案内」を販売しているわけではなく、ビジネスのために使用しているに過ぎないからです。
実際、多くのお客様が勘違いする点なので、要注意です!
【注意】会社名の商標登録の区分の数が増えれば、費用も増加
会社名の商標登録の区分の数を増やす程、様々な商品・サービスをカバーできます。
しかし、区分の数が増える程、会社名の商標登録の費用が増額するので、注意です。
会社名の商標登録の費用は、区分の数で決まる!
商標登録の願書を特許庁に提出する際に、併せて、特許庁に費用(印紙代)を支払う必要があります。
つまり、出願時に掛かる印紙代は、「12,000円(1区分目)+8,600円×追加の区分数」です。
また、登録時にも、特許庁に支払う印紙代が掛かります。
なお、登録料の納付方法は、10年分一括と5年分分割を選ぶことができ、印紙代は、各々、以下の通りです。
10年分一括(10年分の費用):32,900円×区分数
5年分分割(5年分の費用):17,200円×区分数
弁理士の依頼した場合、弁理士の手数料も、原則、商標登録する区分の数で変動します!
なお、会社名の商標登録に掛かる費用について、以下の記事で、詳しく紹介しています。
【会社名の商標登録の費用】概算、相場や節約方法を紹介!費用対効果を意識すべき!
区分を1つ増やすだけで、商標登録に掛かる費用が、数万円、増加します。
特に、設立したばかりの会社で、予算が限られている場合、商標登録の費用を抑えることが重要です。
場合によっては、商標登録する区分の数を制限して、コスパ良く商標登録を取得しましょう。
例えば、販売可能性の低い商品の区分については、商標登録を見送れば、コストを抑えられます。
商標登録を見送った商品の区分についても、追加で商標出願すれば、保護することができます!
会社名の商標登録で区分に迷ったら、商標専門の弁理士に相談!
実際に、会社名を商標登録しようと思ったら、どの区分で商標登録すべきか、迷うこともあるでしょう。
商標登録する区分に迷ったら、商標専門の弁理士に相談しましょう。
筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します!
弁理士歴12年以上の商標専門の弁理士
・何らかのサービスを提供している場合、35類~45類から選びます。商品を販売している場合、1類~34類から選びます。また、小売業などは、35類です
・商品とサービスの区分、どちらもカバーすることもあります。また、名刺や会社案内に会社名を書く場合でも、商標登録で、「印刷物」をカバーする必要はありません
・商標登録する区分の数が増える程、商標登録の費用が増額します。予算を考慮した上で、コスパ良く、店名を商標登録しましょう