・商標「」と商標「」が類似すると、審判官は判断しました
・どのような場合に、結合商標から一部分が分離・抽出して認識される可能性があるか、参考になる審決例になります
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、審判番号が不服2022-5579のロゴ商標「Be the Change.」の審決例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
株式会社INDIGITALは、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」などを指定役務とする、以下のロゴ商標を出願しました。
しかし、特許庁の審査において、以下のロゴの先行商標と抵触するとして、拒絶されました。
この判断に不服のあるINDIGITAL社が、拒絶査定不服審判を請求したのが本件になります。
特許庁の判断
あなたは、出願商標「」と引用商標「」が類似していると思いますか?
つまり、両商標から「Be the Change.」「BE THE CHANGE」部分が分離・抽出して認識されるでしょうか?
結論から言えば、両商標が類似していると特許庁は判断しました。
まず、出願商標「」について、考察します。
出願商標は、「変わることにワクワクできる社会を。」と「Be the Change.」の文字から構成されます。
日本語部分と英語部分では、文字の大きさとフォントが明らかに相違するので、視覚上、両部分が分離して看取されると判断しました。
また、日本語部分と英語部分は、それぞれが独立して出所識別機能を有する要部(主要部分)となり得ると判断しました。
次に、引用商標「」について、考察します。
引用商標は、「BE THE CHANGE」と「さぁ、街から世界を変えよう。」の文字から構成されます。
こちらも、日本語部分と英語部分では、文字の大きさとフォントが明らかに相違するので、視覚上、両部分が分離して看取されると判断しました。
また、日本語部分と英語部分は、それぞれが独立して出所識別機能を有する要部(主要部分)となり得ると判断しました。
このことを前提として、次に出願商標と引用商標を比較します。
両商標の英語部分から、「ビーザチェンジ」の称呼(読み)を生じ、また、「その変化になりなさい」の観念(意味合い)が生じます。
つまり、出願商標及び引用商標から共通の称呼・観念が生じます。
よって、外観において差異があるものの、本願商標と引用商標は類似すると審判官は判断しました。
審決例から学べること
いわゆる結合商標から一部分が分離・抽出して認識されるか否か、本件では争点になっています。
最近の特許庁の審査・審判では、一部分が分離・抽出して認識されない傾向にあります。
しかし、本件の審決では、このような傾向とは逆で、ロゴ商標から一部分が分離・抽出して認識されると判断されました。
本件の出願商標と引用商標のように、文字の大きさやフォントに著しい違いがあれば、一部分が分離・抽出して認識される可能性があることに注意しましょう。