【2026年最新】商標の「先使用権」とは?認められる4つの要件・裁判例・2つのリスクを徹底解説

商標登録は“早い者勝ち”が原則ですが、実は例外があります。


それが、今回、ご紹介する「先使用権」という制度です。

たとえば、あるロゴや商品名を長年使っていたにもかかわらず、他人に先に商標登録されてしまった!

そんなときに使える可能性があるのが、この「先使用権」です。

ただし、この権利が認められるには、商標法上の厳しい要件をすべて満たす必要があります。

また、商標登録せずに、先使用権に頼るには、リスクがあります。

この記事では、

  • 先使用権の基本的な意味
  • 認められるための4つの要件(条件)
  • 実際に認められた裁判例
  • 先使用権に頼ることの2つのリスク

について、商標専門の弁理士が実務目線でわかりやすく解説します。

なお、本記事の要点だけを2分の動画にまとめたので、併せて、ご活用ください!

記事の信頼性
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すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています

・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています

お客様から先使用権の相談を受けたことは、何度もあります

・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です

代表弁理士が直接担当!

【業界では珍しい「商標専門」の弁理士】

目次

  1. 【早い者勝ちの例外】他人に商標登録されても使い続けられる「先使用権」とは?
  2. 商標の先使用権が認められるための「4つの必須要件(条件)」
  3. 【判例紹介】一地方(京都府内など)の広告活動でも「先使用権」が認められた裁判例
  4. 【弁理士の本音】商標登録せずに「先使用権」に頼り切る2つの危険性
  5. 【実録】「先に使っていた」のに、名前を捨てなければならなかった悲劇!
  6. 商標の先使用権のよくある質問(FAQ)
  7. 【まとめ】「登録しなくても大丈夫」は本当か? プロの視点でリスクを可視化!

【早い者勝ちの例外】他人に商標登録されても使い続けられる「先使用権」とは?

初心者くん
初心者くん

商標の先使用権って、何ですか?

弁理士すみや
弁理士すみや

「先使用権」とは、他者の商標出願よりも先に使用していて、一定の要件を満たせば、他者の商標登録があっても、例外的に、継続して商標を使用できる権利です!

商標の世界では、先願主義(早い者勝ち)を採用していて、先に商標出願した人が優先されます。

たとえ、先に商標を使用していたとしても、他人が商標登録を取得してしまうと、商標権侵害になってしまいます。

しかし、先に使用していて、ある程度、有名になっていることがあります。

そのよう場合、企業努力によって蓄積された信用を、既得権として、例外的に保護すべきと、商標法では考えました。

そこで、未登録の周知商標を保護するために、一定の要件(条件)を満たせば、「先使用権」が認められます

つまり、継続的に商標を使用できる権利が、例外的に、与えられます

商標の先使用権が認められるための「4つの必須要件(条件)」

「先使用権」は、商標法では32条に規定されていて、要件(条件)は、条文に示されています。

ただ、条文だと、長くて、分かりにくいです。

先使用権が認められるには、以下の要件(条件)を全て満たす必要があります。

要件①:相手の「出願日」よりも前から日本国内で商標を使っている

相手の商標出願より、先に商標を使用している必要があります。

つまり、同一又は類似の商標が商標出願された時点で、国内で対象の商標を使用している必要があります。

要件②:【最重要】ある程度「有名」になっている(周知性がある)

単に、使用されているだけでは、要件を満しません。

その商標が、需要者の間に広く認識されている必要があります。

なお、全国周知のような高い著名性は必要ありません。

一地方で広く知れ渡っていれば、要件(条件)を満たすと理解されています。

要件③:横取りなどの「不正競争の目的」がない

不正競争の目的がないことも、要件(条件)の1つです。

不正競争の目的とは、競争関係にある同業者の信用を利用して、不正に利益を得る目的のことです。

要件④:現在も「継続して」その商標を使い続けている

商標の使用を途中で中止している場合には、先使用権が認められません。

例えば、第三者の商標出願前から、商標を使用していたとします。

しかし、その後、商標の使用を一時的でも中止していれば、継使用の要件(条件)を満たしません。

【判例紹介】一地方(京都府内など)の広告活動でも「先使用権」が認められた裁判例

商実際に商標権侵害で訴えられた際、被告側が「先使用権」を主張して認められた裁判例は決して多くはありませんが、確実に存在します。

特に参考になるのが、「全国的に超有名ではなくても、特定地域での地道な広告・宣伝活動によって先使用権が認められた」東京地方裁判所の裁判例(平成24年(ワ)第16372号)です。

裁判の概要:地方での地道なPR活動が決め手に!

この裁判では、被告(訴えられた側)が、原告(商標権者)が出願する前から京都府内を中心に「化粧品」について対象の商標を使用し、以下のような積極的な広告・宣伝活動を行っていました。

地元の新聞・雑誌への広告掲載(京都府内等で販売・配布される媒体)

・テレビ番組への出演(関西テレビの番組内で自社製品を宣伝)

裁判所はこれらの実績を総合的に評価し、「原告が商標出願した時点で、少なくとも京都府内やその周辺の消費者の間には広く認識(周知)されていた」と認定。

被告の先使用権を認め、「商標権侵害には該当しない」という判断を下しました。

弁理士すみや
弁理士すみや

件数は多くはありませんが、過去の裁判で、先使用権が認められた事例もあります

【弁理士の本音】商標登録せずに「先使用権」に頼り切る2つの危険性

初心者くん
初心者くん

先使用権があるので、先に使用していれば、商標登録しなくていいですか?

弁理士すみや
弁理士すみや

先使用権に頼るのはリスクがあるので、できれば、商標登録すべきです!

商標の先使用権にだけ頼るのは、以下の2つのリスクがあります

リスク①:裁判で「周知性」が否定され、敗訴する危険がある

一番の危険は、「自分では昔から使っていて有名だと思っていたのに、裁判所には認められなかった」というケースです

先使用権の要件である「周知性(有名であること)」のハードルは非常に高く、長年営業していても認められない判例が数多く存在します。

【失敗事例】23年間営業していた美容室でも「先使用権」が否定された裁判例

例え実際に、大阪地方裁判所の裁判例(平成24年(ワ)第6896号)では、約23年間にもわたって美容室を運営していた被告の先使用権が否定されました。

被告側は「23年間の営業実績があるから周知性がある」と主張しましたが、裁判所は「一定数の固定客はいるものの、近隣には他の美容室を利用する客も多数存在する」と判断。

先使用権を認められるほどの周知性はないとして、商標権侵害を認定してしまったのです。

弁理士すみや
弁理士すみや

先使用権を有するか、簡単には判断できないので、裁判所で争ってみないと、厳密には分かりません

リスク②:第三者にマネされても「差し止め」や「損害賠償」が請求できない

仮に運よく先使用権が認められたとしても、先使用権は「自分が使い続けることを例外的に許される権利」に過ぎません。

商標権のような強力な権利ではないため、以下のような攻撃的な権利行使は一切できません。

・第三者があなたの店名やロゴを勝手にパクって使っていても、使用中止(差し止め)を請求できない

・無断使用されたことによる損害賠償を請求することもできない

つまり、ライバル店や悪質な業者にあなたのブランドやキャラクターを丸パクリされても、指をくわえて見ざるを得ない状態になってしまうのです。

やはり商標出願して、きちんと商標登録することが重要です。

【実録】「先に使っていた」のに、名前を捨てなければならなかった悲劇!

商標法には「先使用権」という救済措置がありますが、これを認めさせるためのハードルは想像以上に高いのが現実です。

私が実際に相談を受けた、ある個人Vtuberの方の苦渋の決断をご紹介します。

事件の始まり:知らぬ間に奪われた「アイデンティティ」

ある日、個人で活動していたVtuberのAさんは、愕然とします。自分の活動名と全く同じ名前のVtuberが、大手事務所からデビューしたのです。

さらに調べると、その大手事務所はすでにその名称を商標出願・登録済みでした。

Aさんは「自分の方が数年も前からこの名前で活動している。先に使っている自分に権利があるはずだ」と考え、藁をも掴む思いで私の元へ相談に訪れました。

専門家の壁:立証できない「周知性」

私はすぐに状況を整理しましたが、そこで大きな壁にぶつかりました。

先使用権を主張するためには、相手が出願した時点で、自分の名称が「需要者の間に広く認識されている(周知性)」ことを客観的な資料で証明しなければなりません。

しかし、このような事態になるとは思わず、Aさんは、ほとんど資料を保管していませんでした。

結末:泣く泣く選んだ「改名検討」という道

「先に使っていた」という事実はあっても、それを法的に証明する武器(資料)が何一つなかったのです。

このまま活動を続ければ、逆に大手事務所から商標権侵害で訴えられるリスクがあります。

裁判で戦うコストと、負けた時のリスクを天秤にかけた結果、Aさんは数年間愛用し、ファンと共に育ててきた名前を捨て、「名称変更(改名)」という最も辛い選択を検討することになりました。

弁理士からの教訓

商標登録を後回しにするなら、せめて「いつ、どの程度の規模で活動していたか」の証拠を、意識的に、かつ膨大に残しておく必要があります。

しかし、その労力とリスクを考えれば、数万円で「商標権」という確実な盾を買っておく方が、はるかに安上がりで安全なのです。

初心者にも、分かりやすく、かつ、丁寧!

【業界では珍しい「商標専門」の弁理士】

商標の先使用権のよくある質問(FAQ)

Q1. 先使用権とは、どういうときに主張できますか?

商標登録していない状態で、他人よりも先にその商標を使用していた者が、継続して使用していたら、その範囲において使用を続けることができる権利です。

主に「自社が先に使っていたのに、他社に登録された」といった場合の防御手段として機能します。

Q2. 「使っていた」とは具体的にどのような証拠が必要ですか?

使用の証拠としては、例えば、以下のような書類・記録が有効です

  • 商品パッケージ、ラベル、広告など
  • ウェブサイト、SNSでの使用履歴(画面キャプチャ含む)
  • 販売伝票や納品書などの取引記録

特に、「どの地域で」「いつから」使用していたかが重要です。

Q3. 先使用権を主張すれば、相手の商標登録を無効にできますか?

いいえ。先使用権は自分が使い続けることを主張できるだけであり、相手の商標登録を無効にできません。

商標登録を無効にしたい場合、別途「無効審判」や「取消審判」などの法的手続きを検討すべきです。

なお、無効審判・不使用取消審判については、以下の記事で、詳しく説明しています。

【2026年最新】商標登録の無効審判の仕組みや実際の勝算とは?初心者が知っておくべきポイント 【2026年最新】使用していない商標登録を取り消せる!?不使用取消審判を、分かりやすく紹介!

Q4. 先使用権の「使用地域」はどこまで認められますか?

通常、その商標を実際に使用していた地域(営業地域)に限定されます。

全国展開していない場合だと、他の地域での使用は差し止められる危険性があります。

Q5. 商標登録されたら、先使用権の主張はすぐに必要ですか?

通常、商標権者から警告を受けたり、使用差し止め請求をされた際に主張することになります。

ただし、紛争を未然に防ぐためにも、先使用の証拠を整理・保管しておくことが重要です。

Q6. 自分が先に使っていたのに、商標登録を取られてしまった。どうすればいいですか?

まずは冷静に事実関係を整理し、使用証拠を集めましょう。

その上で、先使用権を主張するか、相手の商標登録に対して無効審判を請求するか等を検討します。

なお、相手に連絡を取る前に、弁理士など専門家への相談をおすすめします。

【まとめ】「登録しなくても大丈夫」は本当か? プロの視点でリスクを可視化!

本記事のまとめ

・先願主義(早い者勝ち)を採用しているので、先に商標出願した人が優先されます

・しかし、先に使用していて、ある程度、有名であれば、例外的に「先使用権」が認められて、継続的に商標を使用できる可能性があります

・ただし、周知性などの要件(条件)を満たす必要があります。先使用権に頼り過ぎずに、重要な商標は、きちんと商標登録することが大切です

先使用権は、あくまで「例外的な救済」です。

条件は非常に厳しく、将来的にビジネスを広げる際の足かせになることも少なくありません。

弁理士すみや
弁理士すみや

判断を誤ると、他人の商標権を侵害するリスクがあります。

専門家と相談しながら、先使用権が認められるか、慎重かつ丁寧に判断すべきです!

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先使用権・商標権侵害の疑問を解決!

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