・「ぼてぢゅう総本家」の文字を含む標章の被告の使用行為は、原告の登録商標「ぼてぢゅう」などの商標権侵害に該当すると判断しました
・ただし、一部の標章の被告の使用行為は、商標権侵害に当たらないと判断しました
・結合商標の類否判断の参考になる事例になります
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、東京地方裁判所の令和元年(ワ)第34096号の判決、商標「ぼてぢゅう」の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
原告は、株式会社東京フー ドとBOTEJYU Groupホールディングス株式会社の二社になります。
原告は、「穀物の加工品」などの商品を指定する以下の2つの商標登録を、各々、保有しています。
これに対して、被告は、以下の標章を付した「焼きそば」「お好み焼き」を製造・販売しました。
このような状況で、自己の商標権侵害を主張して、原告が被告を訴えたのが、本件になります。
裁判所の判断
本件では、原告の登録商標と被告の使用標章が類似するか、争点になりました。
つまり、あなたは、使用標章1及び2から、「ぼてぢゅう」部分が分離・抽出して認識されると思いますか?
結論から言えば、使用標章1及2から、「ぼてぢゅう」部分が分離・抽出して認識されるので、原告の登録商標と類似すると判断しました。
そして、裁判所は、被告の行為が、原告の商標権侵害に該当すると判断しました。
使用標章1及び2は、上段に「宗右衛門町 趣味のお好み焼」、下段に「ぼてぢゅう総本家」の文字で構成されています。
裁判所は、上段の「宗右衛門町 趣味のお好み焼」の文字が、下段の「ぼてぢゅう総本家」の説明書きに過ぎないと判断しました。
つまり、「宗右衛門町 趣味のお好み焼」の文字は、出所を識別する機能がない、すなわち、識別力(商標としての特徴性)がないと考えました。
また、下段の「ぼてぢゅう総本家」のうち、「ぼてぢゅう」は極めて特徴的な造語であるのに対して、「総本家」は「おおもとの本家」を意味する一般的な日本語になります。
よって、「総本家」の文字部分から出所識別標識としての称呼・観念が生じないとのことです。
一方、「ぼてぢゅう」の文字部分が、需要者に対し、出所識別標識として強く支配的な印象を与えると判断しました。
よって、使用標章1及び2は、原告の登録商標に類似するとのことです。
なお、被告は、以下の標章も使用していました。
こちらは、「総・ぼ・て」の3文字を含むロゴと「ぼてぢゅう総本家」の文字から構成されます。
裁判所は、「総・ぼ・て」の3文字を含むロゴと「ぼてぢゅう総本家」の文字が不可分的に結合しているので、この標章については、原告の登録商標とは類似しないと判断しました。
判例から学べること
結合商標から一部分が分離・抽出して、認識されるか否かが、争点になりました。
本件でも、「つつみのおひなっこや」事件で示された最高裁判所の規範(基準)を参考に、裁判所は検討しています。
以下の記事で、「つつみのおひなっこや」事件を解説しているので、ご参照ください。
本件の被告の使用態様のように、組み合わされる文字(ロゴ)や構成によって、判断が変わってきます。
結合商標の判断の際には、注意深く、詳細に検討する必要があります。