世の中、商品名やサービス名が略されることが、多々あります。
さらには、「プリクラ」「インスタ」のように、略称の方が、正式名称よりも、有名になることもあります。
筆者は、商標専門の弁理士として、10年以上、働き、略称の商標登録も手伝ってきました。
この記事を読めば、コストを掛けてでも、略称を商標登録すべき理由が分かります。
また、実際に、商標登録している略称も、紹介します。
正式名称だけではなく、略称も商標登録すべき3つの理由
商品・サービスの正式名称については、きちんと商標登録していることが多いです。
それに追加して、略称についても、商標登録しようとすると、追加のコストが掛かります。
商標登録に掛かる費用は、決して、安くはありません。
しかし、略称を商標登録しないことには、リスクがあります。
以下の3つの理由により、略称も商標登録すべきです。
- 正式名称の商標登録では、略称までカバーしきれない!
- 他人が、勝手に、略称の商標登録を取得してしまうかも
- 勝手に、他人に略称を使用されても、「泣き寝入り」する可能性あり!
商標の類否は、称呼(読み)・外観(見た目)・観念(意味合い)の3点をもとに判断します。
詳細については、以下の記事で紹介しています。
【商標の類否判断】重要!商標が似ているか、どう判断する?正式名称と略称を比較すると、観念(意味合い)は類似する可能性があります。
しかし、称呼(読み)・外観(見た目)は明らかに異なります。
正式名称と略称が類似しないと判断される危険性があります。
商標登録は、類似範囲まで効力が及びますが、正式名称の商標登録では、略称まで、カバーしきれません。
他人が、勝手に、略称を商標出願したとします。
説明した通り、正式名称と略称が類似しない可能性が高いです。
よって、正式名称の商標登録では、略称の商標出願を防げません。
つまり、他人が、勝手に、略称の商標登録を取得する危険性があります。
略称が著名であることを証明すれば、無効審判などで、商標登録を取り消せる可能性はあります。ただし、必ず、取り消せるとは限りません!
他人が、無断で、自分の商品・サービスに、あなたの略称を使用したとします。
この場合、正式名称の商標登録をもとに、商標権侵害を主張しても、認められず、「泣き寝入り」する危険性があります。
正式名称と略称が類似しない可能性が高いからです。
不正競争防止法をもとに主張する余地もありますが、略称の著名性が条件になります。やはり、略称を商標登録するのが望ましいです!
略称の商標登録例の紹介
正式名称だけではなく、略称についても、商標登録していることが多いです。
特に、ゲーム関連の登録例が多いので、ゲーム関連とそれ以外に分けて、紹介します。
例えば、ゲームのタイトルは、省略されて、ユーザーに広まることが多々あります。
有名なゲームのタイトルは、以下のように、略称も商標登録を取得しています。
- (「ドラゴンクエスト」の略称)
- (「ファイナルファンタジー」の略称)
- (「モンスターハンター」の略称)
- (「実況パワフルプロ野球」の略称)
- (「ときめきメモリアル」の略称)
- (「あつまれどうぶつの森」の略称)
- (「マリオカート」の略称)
- (「桃太郎電鉄」の略称)
ゲームタイトル以外にも、様々な商品名・サービス名の略称が商標登録されています。
例えば、SNSサービスの「インスタグラム」も、「インスタ」と省略されます。
以下の通り、「インスタ」も登録商標です。
- (「インスタグラム」の略称)
その他にも、以下のような略称が商標登録されています。
- (カードゲーム「ポケモンカード」の略称)
- (漫画「花より男子」の略称)
- (写真シール機「プリント倶楽部」の略称)
- (飲食店「マクドナルド」の略称)
- (喫茶店「スターバックス」の略称)
- (コンビニ「ファミリーマート」の略称)
略称を商標登録するための費用
略称を商標登録するためには、特許庁に商標出願する必要があります。
ざっくりと言えば、①出願時と②登録時に、費用が掛かります。
特許庁での審査で、拒絶理由通知を受けた場合、別途、拒絶理由通知に応答するための費用が掛かる可能性があります
自分で商標出願した場合でも、特許庁に支払う印紙代が、掛かります。
以下の通り、印紙代は、区分(商品・サービスのカテゴリー)の数で、決まります。
1区分目:12,000円
追加1区分あたり:8,600円
また、弁理士に商標出願を依頼すると、弁理士の手数料も掛かります。
ちなみに、筆者の事務所(すみや商標知財事務所)の場合、以下の通りです。
1区分目:50,000円(税抜)
追加1区分あたり:30,000円(税抜)
登録時にも、特許庁に支払う印紙代が掛かります。
なお、登録料の納付方法は、10年分一括と5年分分割を選ぶことができ、印紙代は、各々、以下の通りです。
10年分一括(10年分の費用):32,900円(1区分あたり)
5年分分割(5年分の費用):17,200円(1区分あたり)
また、弁理士が商標出願を代理している場合、弁理士の手数料も掛かります。
ちなみに、筆者の事務所(すみや商標知財事務所)の場合、区分の数に関係なく、30,000円(税抜)です。
略称の商標登録のやり方
略称を商標登録するには、商標登録の願書を特許庁に提出します。
知的財産・支援ポータルサイトにおいて、願書の様式をダウンロードできます。
例えば、筆者が、自分の事務所名(すみや商標知財事務所)の略称として、「すみや事務所」を商標登録したいとします。
その場合、商標登録の願書を、例えば、以下のように記載します。
手間や時間を省きたければ、略称の商標登録を商標専門の弁理士に依頼!
弁理士に頼らずに、自力で商標出願を進めて、商標登録を取得することもできます。
ただし、その場合、手間や時間が掛かります。
手間や時間を省略したい方は、商標専門の弁理士に、略称の商標登録をお願いしましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご依頼いただければ、一緒に検討しながら、迅速に対応します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・正式名称だけではなく、略称が消費者の間に広まり、定着することが多々あります
・正式名称と略称が類似しないと判断される危険性があります。正式名称の商標登録だけでは、略称をカバーしきれません
・他人が、勝手に、略称の商標登録を取得する危険性があります。また、他人に勝手に使用されても、「泣き寝入り」する危険性があります