【キリンラーメン事件から学ぶ】著名商標と似たネーミングの落とし穴と商標登録の重要性

「キリンラーメン」という名前の商品が、ある日突然「キリマルラーメン」に変わったことをご存じでしょうか?

実はこの背景には、著名商標「KIRIN」とのネーミングトラブルがありました。

ブランド名に込めた想いとは裏腹に、商標上の問題から商品名の変更を余儀なくされてしまったのです。

本記事では、「キリンラーメン」の事例を通じて、

  • 著名商標と似たネーミングが引き起こすリスク
  • そのようなトラブルを避けるために取るべき2つの教訓(ネーミングの工夫・早期出願)

を、商標専門の弁理士がわかりやすく解説します。

商品名やブランド名を考えている方、あるいはすでにビジネスを展開している方にとって、知っておいて損はない内容です。

記事の信頼性
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すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています

・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています

商標トラブルに遭ったお客様をお手伝いしたことが、何度もあります

・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です

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【業界では珍しい商標専門の弁理士】

キリンラーメンとは、ソウルフードの即席ラーメン

あなたは、「キリンラーメン」を知っていますか?

「キリンラーメン」は、愛知県碧南市の小笠原製粉社が販売していた即席ラーメンになります。

地元で親しまれている、いわゆるソウルフードでした。

販売されていた当時のパッケージは、以下の通りになります。

(ウェブサイト「J-CASTニュース」より)

キリンホールディングスとの商標「キリンラーメン」の争い

キリンビールでも有名な飲料大手キリンホールディング社との間で、トラブルになりました。

「キリンラーメン」を製造・販売している小笠原製粉社は、商標登録を取得していなかったようです。

一方、キリンホールディング社は、「穀物の加工品」などを指定する以下の商標を1996年6月24日に商標出願して、商標登録を取得しています。

商登第4180368号

キリンホールディング社は、小笠原製粉社に、商標の中止を求めて、訴訟を提起しました。


これに対して、小笠原製粉社は、主に以下の2つの反論手続き(対抗策)が考えられました。

  • 不使用取消審判の請求
  • 先使用権を有する旨の主張

不使用取消審判の請求(実際に、請求している)

キリンホールディング社が、「穀物の加工品」について、使用していなかった場合には、不使用取消審判を請求することで、商標登録の一部を取り消すことができます。

権利主張の根拠となっているキリンホールディング社の商標登録を取り消せれば、小笠原製粉社は、「キリンラーメン」を使用し続けることができます。

実際に、小笠原製粉社は、キリンホールディング社の商標登録に対して、不使用取消審判(取消2014-300549)を請求しました。

しかし、審判において、商標登録を維持する旨、判断が下れました。

小笠原製粉社は、この審決に不服があり、訴訟(平成28年(行ケ)第10093号)を提起しました。

しかし、小笠原製粉社の請求は棄却され、キリンホールディング社の商標登録が維持されました。

弁理士すみや
弁理士すみや

子会社が「きのこがゆ」に登録商標を使用していたため、不使用取消審判に失敗しました

先使用権を有する旨の主張(条件を満たさずに、断念)

1965年に「キリンラーメン」の発売を開始しています。

キリンホールディング社の商標出願よりも、早く「キリンラーメン」を使用していますので、先使用権の可能性が考えられました。

先使用権が認められれば、「キリンラーメン」の使用を継続することができます。

なお、先使用権については、以下の記事をご参照ください。

商標の「先使用権」とは?認められる4つの要件・裁判例・2つのリスクを徹底解説

しかし、ここで、問題なのは、1998年に一時的に生産・販売を中止した点です。

「継続して商標の使用していること」が先使用の要件(条件)になります。

よって、残念ながら、小笠原製粉社は、先使用権の主張を断念したものと推測します。

弁理士すみや
弁理士すみや

一時的に商標の使用を中断したので、先使用権の要件(条件)を満たしません

「キリンラーメン」を諦め、「キリマルラーメン」に商品名を変更

小笠原製粉社とキリンホールディング社との紛争は、「キリンラーメン」の商品名を変更することで、和解しました。

小笠原製粉社はキリンラーメンの新名称の公募を行い、その結果、商品名は、「キリマルラーメン」に変更しました

現在の商品パッケージは、以下の通りです。

(小笠原製粉株式会社の公式ウェブサイトより)

また、小笠原製粉社は、名称変更後の「キリマルラーメン」関連の商標登録も取得しています。

商登第6163264号
商登第6579273号

著名商標を避けたネーミング【商標「キリンラーメン」の教訓①】

小笠原製粉社の商品ラインナップを見ると、「カピバララーメン」や「オオハシラーメン」も販売しています。

(小笠原製粉株式会社の公式ウェブサイトより)

このような商品ラインナップからも分かる通り、動物のキリンのパッケージを使用しているので、「キリンラーメン」という商品名にしたようです。

つまり、キリンホールディングス社の著名商標「キリン」(KIRIN)を真似したわけではないと推測できます

しかし、安易に商品名に著名商標を含めると、予想していないトラブルが生じる危険性があります。

トラブルを避けるため、商品やサービスのネーミングの際には、著名商標を回避するよう、注意しましょう。

弁理士すみや
弁理士すみや

SNSによる炎上リスクもあるので、他人の商標を真似したと思われないネーミングが大切です!

早めに商標出願すべき【商標「キリンラーメン」の教訓②】

小笠原製粉社は、キリンホールディングス社の商標出願よりも早く商標を使用していました。

もし、キリンラーメンを販売して、すぐに商標出願していれば、今回のトラブルは防げた可能性が高いです

50年以上、使っていて、多くの人に親しまれた「キリンラーメン」の商品名を変更したのは、断腸の思いだったでしょう。

このような事態を避けるためにも、自社にとって重要な商品の名称は、きちんと商標出願する必要があります

弁理士すみや
弁理士すみや

商標の世界は先願主義(早い者勝ち)なので、早めの商標出願が重要です!

著名商標との関係でのネーミング・商標登録に関する「よくある質問」(FAQ)

以下は、読者の方が迷いがちな実務上の疑問に対して、簡潔に答えたFAQです。

記事本文と合わせてご活用ください。

Q1. そもそも「著名商標」とは何ですか?

一般消費者に広く知られ、多くの関連商品や役務で高い認識を持つ商標です。

著名商標は、使用実態や知名度・広告露出などを基準に、一般の消費者が「このマークや名称=特定の出所」と認識できる程度に広がっている商標を指します。

法的には、「著名性」「周知性」という概念で扱われ、類似判断でも特別な配慮がされます。

Q2. 著名商標に似た名称を使うと、必ず商標侵害になりますか?

必ずではありませんが、高いリスクがあります。

商標権侵害の判断は

・商標そのもの(称呼・外観・観念)の類似性

・指定商品・役務との関係

・需要者の注意レベル

などを総合的に考慮して、行います。

著名商標は一般的に「類似と判断されやすい」という特性があり、商標の類似性が認められると商標権侵害につながる可能性が高くなります。

Q3. 著名商標に完全に一致しなくても避けるべきですか?

はい、特に以下のような場合は避けた方が安全です。

・商標の一部に、著名商標をそのまま含んでいる

・意味や発音が似ている

・類似したロゴ・カラー・フォントの印象がある

・対象市場や消費者層が重複する

似ているかどうかは消費者の立場で判断されるため、自分では違うと思っても、他者が著名商標と関連すると感じる可能性がリスクになります。

Q4. 著名商標のある領域(カテゴリ)で使う名前でも、商標出願できますか?

出願自体は可能ですが、成功率は下がる可能性があります。

著名商標がある領域では、審査官の判断基準が厳しくなることがあります。

そのため、単純な回避策だけでなく、

・著名商標との差別化戦略

・指定商品・役務の限定

・先行商標の網羅的調査

を踏まえて、慎重に検討することが重要です。

Q5. 著名商標回避とブランド戦略は矛盾しますか?

矛盾しませんが、バランスが重要です。

著名商標を避けること自体が目的になると、ブランドとして浸透しにくい名称になってしまうこともあり得ます。

そのため、

・ブランド価値の創造

・消費者への伝わりやすさ

・他社と差別化できる名称

といった要素などを同時に考慮する必要があります。

Q6. 著名商標に関する判断は自分でできますか?

ケースによりますが、専門的な判断が有効なことが多いです。

類似性・周知性・市場環境などは専門的な分析が必要な場合も多く、誤った判断がビジネスリスクにつながる可能性があります。

特に、知名度の高いブランド領域でネーミングする場合は、専門家に相談してリスク評価することをおすすめします。

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本記事のまとめ

・「キリンラーメン」を製造・販売していた小笠原製粉社は、飲料大手キリンホールディング社との間で、商標のトラブルになりました

・その結果、50年以上、使用していた「キリンラーメン」の商品名を、「キリマルラーメン」に変更しました

・このようなトラブルから、著名商標を避けたネーミングの重要性と、商標出願の必要性を学ぶことができます

有名なブランド(著名商標)は、たとえ業種が違っても、その「イメージを薄める」という理由だけで攻撃してくる力を持っています。

巨額の広告費を投じた後に、巨大企業から警告状が届く……そんな悪夢を避けるには、彼らが「どこに線を引いているか」を知り尽くしたプロの視点が不可欠です。

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