「朝バナナ」事件の判例紹介

まとめ

・書籍のタイトル(題号)の「朝バナナダイエット成功のコツ40」の使用は、「朝バナナ」の商標権侵害に該当しないと判断されました

・特に書籍や雑誌などのタイトルの場合、商標としての機能を発揮しないことがあるので、使用態様などを考慮して、慎重に検討しましょう

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、東京地方裁判所の平成21年(ワ)第657号の判決、いわゆる「朝バナナ」事件の判例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

原告である株式会社ぶんか社が、「書籍」「雑誌」などを指定商品とする「朝バナナ」の商標登録(商登第5171201号)を保有していました。

これに対して、被告は、「朝バナナダイエット成功のコツ40」というタイトルの書籍を出版・販売しました

原告が、上記の「朝バナナ」の商標登録に基づいて、被告に対して、商標権侵害を主張して、裁判を提起しました。

裁判所の判断

結論から言えば、裁判所は、商標権侵害に該当しないと判断して、原告の請求を棄却しました

被告書籍のタイトル(題号)は、「朝バナナダイエット成功のコツ40」で、登録商標「朝バナナ」を含みます。

しかし、商標の使用が商標権の侵害行為であると認められるためには、その商品の出所を表示して、自他商品を識別する標識としての機能を果たす態様で使用されている必要があります。

被告書籍の内容は、「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し、ダイエットに成功するために、著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げています。

そうすると、被告書籍に接した読者は、「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表示を、被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であると理解します。

被告書籍のカバーや表紙等における「朝バナナ」の表示は、単に書籍の内容を示す題号の一部として表示したものに過ぎず、自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用されていると認められないと裁判所は示した。

よって、被告の行為は、原告の商標権を侵害していないと、裁判所は判断しました。

判例から学べること

確かに、被告の書籍の題号には「朝バナナ」が含まれているので、商標権侵害を主張した原告の心情も理解できます。

しかし、商標権侵害の判断においては、商標としての機能、つまり、自他商品識別機能や出所表示機能を発揮しているかどうかが、ポイントになります。

特に、書籍や雑誌の題号(タイトル)については、本件のように、単に内容を表示しているに過ぎず、商標として機能していないことが多々あります。

商標権侵害の検討の際には、使用態様をきちんと確認した上で、商標としての機能を発揮しているかどうか、しっかり確認しましょう

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