様々な企業や個人が、自分のロゴを作成して、ビジネスに使用しています。
- (商登第6478440号)
- (商登第5899793号)
- (商登第1577096号)
- (商登第2098259号)
実際、ビジネスで使用されている多くのロゴが、商標登録されています。
一方で、ロゴは、著作権で保護できると考えているから、商標登録は不要と判断している方もいます。
この記事を読めば、著作権と商標登録のロゴの保護内容の違いが、分かります。
また、著作権によるロゴの保護の注意点や商標登録の重要性も、教えます。
商標登録と著作権は別の制度
商標登録と著作権は、全く別の制度です。
著作権者であれば、必ず、商標登録を取得できるとは限りません。
一方、ロゴを商標登録しても、ロゴの著作権を取得できるわけではありません。
ちなみに、商標登録を管轄している省庁は「特許庁」なのに対して、著作権は「文化庁」です
著作権でロゴを保護できるとは限らない!
ロゴであれば、必ず、著作権で保護されると勘違いしている人も多いでしょう。
しかし、ロゴが、著作権で保護されないことがあります。
つまり、ロゴが著作物に該当しない危険性があります。
著作物に該当するための条件
著作権法2条では、「著作物」を、以下のように、規定しています。
思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう
よって、著作権法で保護される「著作物」に該当するためには、以下の4つの条件(要件)を満たす必要があります。
- 思想または感情が表れている
- 著作者の個性が表れている
- 表現されたものである
- 文芸、学術、美術または音楽の範囲に属する
著作権でロゴが保護されなかった事例
裁判で争った結果、著作権によるロゴの保護が認められなかった事例があります。
その中で、有名な事例が、アサヒビールのロゴの事例(平成6年(ネ)1470号事件)です。
判決文は、こちら。
この程度のデザイン的要素の付加では、美的創作性を感得できないとして、著作物性が否定されました。
一方、商標登録は、登録になれば、確実に権利が発生する!
一方、商標登録の場合は、著作権と異なります。
商標登録になれば、確実に、商標権が発生して、登録した商標を保護できます。
登録商標に類似するロゴの他者の使用に対しても、商標権を行使できます!
著作権は、創作時に、自動的に生じる!
著作権は、創作した時点で、自動的に発生します。
そのため、著作権の発生時期が、不明確になることも、多々あります。
なお、著作権の発生時期を明確にしたい方は、著作権登録制度を利用することが考えられます。
著作権登録制度については、こちらの文化庁HPをご参照ください。
一方、商標登録は、登録になれば、権利が発生
一方、商標を使用すれば、商標権が生じるわけではありません。
特許庁に商標出願して、商標登録になれば、権利が発生します。
権利の発生時期は明確で、公開データベース「J-PlatPat」で調べれば、すぐに分かります。
著作権の保護期間には制約がある!
著作権で、著作物が、永久に保護されるわけではありません。
著作権の保護期間には、制約があります。
著作権法の51条によると、保護期間は、原則、著作者の「生存している期間+死後70年間」です。
商標登録は、更新し続ければ、半永久的に保護!
一方、商標登録の保護期間には、制限がありません。
商標登録を更新し続ければ、半永久的に登録商標を保護できます。
商標登録の存続期間は、10年間ですが、更新手続きする度に、10年ずつ、延長できます
著作権を発生させるためには、基本、費用は掛からない!
著作権は、創作した時点で、自動的に発生します。
つまり、著作権を発生させるためには、基本、費用は掛かりません。
文化庁での著作権登録する場合、登録免許税などが掛かります
一方、商標登録には、費用が掛かる!
一方、商標登録は、特許庁に申請する必要があり、特許庁に支払う費用が生じます。
また、弁理士などの専門家に依頼すると、手数料も掛かります。
詳しくは、以下の記事で、紹介しています。
【ロゴの商標登録の費用】概算、相場や節約方法を紹介!著作権では、第三者の模倣行為を止められないかも!?
ロゴだと、著作物に該当しない危険性があります。
また、「他人の著作物に依拠して創作されたこと」が著作権の条件になります。
つまり、偶然、似てしまった場合には、著作権侵害に該当しません。
残念ながら、著作権では、第三者の模倣行為を中止できない危険性があります。
商標権侵害では、「過失」を証明する必要なく、主張しやすい!
誤って、登録商標と同一もしくは類似する商標を使用してしまった場合には、商標権侵害に該当します。
つまり、法律上、「過失」があれば、商標権侵害になります。
商標権侵害の場合、「過失」が推定されるので、権利者は、侵害者の「過失」を証明する必要がありません。
著作権侵害に比べて、商標権侵害の方が、主張しやすいことが多いです。
商標登録と著作権の比較
商標登録と著作権を比較すると、以下のリストの通りです。
商標登録 | 著作権 | |
権利が発生するか? | ||
権利の発生時期 | 特許庁への申請が必要 (権利の発生時期が明確) | 創作時に、自動的に生じる (権利の発生時期が不明確なことも) |
保護期間 | ||
権利発生に掛かる費用 | ||
権利の行使 |
【注意点①】企業ロゴなど、重要なロゴは、商標登録すべき!
企業ロゴなど、重要なロゴの場合については、知的財産権で厚く保護すべきです。
著作権だけでは、ロゴの著作物性が否定される危険性があります。
また、他人の模倣行為を排除できない可能性もあります。
コストは掛かりますが、企業ロゴなど、重要なロゴであれば、商標登録すべきです。
【注意点②】著作権があることを前提に、著作権を譲り受けるべき!
ロゴの著作物性があるか、実際には、裁判で争ってみないと分からないことが多いです。
しかし、ロゴの作成者との話し合いでは、著作権があることを前提に進めましょう。
著作権のトラブルを避けるために、作成者から、ロゴの著作権を譲り受けるべきです。
著作者人格権を行使しないよう、契約すべき
著作権を譲り受けても、著作者人格権は、ロゴの作成者に残るので、注意です。
著作者人格権は、以下の3つです。
- 公表権(公表するかしないか、また、公表方法を決める権利)
- 氏名表示権(著作者名を表示するか、また、表示方法を決める権利)
- 同一性保持権(内容などを、自分の意に反して勝手に改変されない権利)
できれば、著作者人格権を行使しないよう、作成者と契約するのが、望ましいです。
ロゴの商標登録で分からなければ、商標専門の弁理士に相談!
実際に、ロゴを商標登録しようとすると、分からないことも出てくるでしょう。
分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。
筆者(すみや商標知財事務所)にご相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・著作権は、商標登録とは全く別の制度です。商標登録と異なり、著作権は、創作した時点に、自動的に発生します
・ただし、ロゴによっては、著作物性が否定される可能性があります。また、著作権の侵害が認められるためには、自分の著作物に依拠したことが条件になります
・企業ロゴなど、重要なロゴの場合、知的財産権で厚く保護すべきで、そのためにも、ロゴを商標登録するのが望ましいです