商標出願したら、自動的に商標登録になるわけではなく、特許庁の審査官が、登録を認めるか、審査します。
例えば、「出願商標が公序良俗を害するおそれがある」と審査官が判断すると、商標登録できません。
この記事を読めば、商標登録できない「公序良俗を害するおそれがある商標」を具体的に教えます。
また、実際に、特許庁の審査で拒絶された商標の事例も、伝えます。
【商標法の規定】公序良俗を害するおそれがある商標は、商標登録できない
商標法では、商標登録できない商標を明確に規定しています。
商標法4条1項7号において、以下の商標に該当する場合、商標登録できない旨、規定しています。
公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
よって、審査官が、公序良俗に害するおそれがあると判断した場合、商標法4条1項7号を根拠に、商標出願が拒絶される危険性があります。
商標登録できない、公序良俗を害するおそれがある商標とは?
そもそも、公の秩序・善良の風俗(公序良俗)とは、何でしょうか?
公の秩序は、国家および社会の一般的利益を、善良の風俗は、社会の一般的倫理をそれぞれ意味します。
よって、出願商標が、国家・社会の一般的利益もしくは社会の一般的倫理を害するおそれがあれば、商標登録できません。
多くの人がイメージする通り、例えば、以下のような場合、出願商標が、公序良俗を害するおそれがあります。
- 商標自体が、きょう激、卑わい、差別的なもの
- 商標自体が、他人に不快な印象を与えるようなもの
さらには、以下のような場合も、公序良俗を害するおそれがあるとして、商標登録できません。
- 他の法律によって使用が禁止されている商標
- 国際信義に反する商標
予期せずに、「公序良俗を害するおそれがある」として、特許庁の審査で、拒絶されることがあるので、注意です!
【審査基準の規定】商標登録できない、公序良俗を害するおそれがある商標の具体例
それでは、どういった商標が、「公序良俗を害するおそれがある商標」に該当するでしょうか?
商標審査基準において、公序良俗を害するおそれがある商標の具体例を示しています。
- 「大学」等の文字を含み学校教育法に基づく大学等の名称と誤認を生ずるおそれがある場合
- 「○○士」などの文字を含み国家資格と誤認を生ずるおそれがある場合
- 周知・著名な歴史上の人物名であって、当該人物に関連する公益的な施策に便乗し、その遂行を阻害する等公共の利益を損なうおそれがあると判断される場合
- 国旗(外国のものを含む。)の尊厳を害するような方法で表示した図形を有する場合
- 音商標が、我が国でよく知られている救急車のサイレン音を認識させる場合
- 音商標が国歌(外国のものを含む。)を想起させる場合
公序良俗を害するおそれがある商標の種類って、意外に、多いんですね
様々な商標の種類があるので、注意です!その他にも、指定暴力団の標章(代紋など)と同一又は類似する場合も、「公序良俗を害するおそれがある商標」に該当します
なお、公益保護のため、「公序良俗を害するおそれがある商標」が商標登録できない旨、規定されています。
そのため、私益(個人の利益)が害される場合でも、「公序良俗を害するおそれがある商標」に該当しない可能性が高いです。
【実例】公序良俗を害するおそれがあるとして、商標登録できなかった商標
具体的な事例を紹介しないと、「公序良俗を害するおそれがある商標」のイメージが湧かないかもしれません。
そこで、より分かりやすいよう、実際に商標登録できなかった拒絶例を紹介します。
商標「〇〇大学」の拒絶例
「大学」の文字を含んだ商標の場合、学校教育法に基づく大学と誤認する危険性があります。
そのため、以下の「〇〇大学」の商標出願は、公序良俗を害するおそれがあるとして、拒絶されています。
- 佐久先端大学(商願2023-22830)
- 和合大学(商願2022-97505)
- DX大学(商願2023-72670)
「大学」の文字を含む商標だと、必ず、拒絶されるんですか?
「大学」の文字を含んでいても、学校教育法に基づく大学と誤認する危険性がなければ、商標登録になります。例えば、「お片付け大学」や「DIY大学」は、登録商標です
商標「〇〇士」の拒絶例
「弁理士」「弁護士」「公認会計士」「税理士」「行政書士」「司法書士」「社会保険労務士」など、「士」の付く国家資格は多いです。
そのため、「〇〇士」という商標だと、国家資格と誤認を生ずる危険性があります。
実際、以下の「〇〇士」の商標出願は、公序良俗を害するおそれがあるとして、拒絶されています。
- 経営会計士(商願2022-39954)
- 労務管理士(商願2022-107897)
- 薬事専門士(商願2023-24231)
「〇〇士」の商標は、必ず、拒絶されるんですか?
国家資格と誤認を生ずる危険性がなければ、商標登録になります。例えば、「食品分析士」・「スマホ点検士」や「空撮士」は、登録商標です
「坂本龍馬」関連の商標の拒絶例
「坂本龍馬」は、幕末に活躍した、周知・著名な歴史上の人物で、絶大な人気があります。
多くの企業が、「坂本龍馬」に関連した商品を販売しています。
しかし、以下の「坂本龍馬」もしくは「龍馬」を含む商標出願は、公序良俗を害するおそれがあるとして、拒絶されています。
- 新天地 坂本龍馬 記念館(商願2021-30046)
- 龍馬 LEMON(商願2020-129381)
- (商願2019-16161)
「シャンパン」関連の商標の拒絶例
「シャンパン」は、フランスのシャンパーニュ地方で作られる、有名な発泡性ぶどう酒の名称です。
よって、「シャンパン」の文字を含む商標は、国際信義に反するおそれがあり、公序良俗を害するおそれがあるとして、商標登録が難しいです。
実際、以下の「シャンパン」もしくは「しゃんぱん」を含む商標出願は、公序良俗を害するおそれがあるとして、拒絶されています。
- しゃんぱんいちご大福(商願2021-131363)
- シャンパンカラーダイヤモンド(商願2022-25951)
- シャンパン塩キャラメルカヌレ(商願2023-48698)
筆者も経験がありますが、意見書で反論しても、「シャンパン(Champagne)」を含む商標は、なかなか商標登録できません
商標登録できないか、判断に迷ったら、商標専門の弁理士に相談!
公序良俗違反に該当するか、つまり、商標登録できないか、判断に迷うこともあるでしょう。
そのような場合には、商標専門の弁理士に相談しましょう。
筆者(すみや商標知財事務所)にご相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・「公の秩序又は善良の風俗(公序良俗)を害するおそれがある商標」は、商標登録できません
・例えば、「商標自体が、きょう激、卑わい、差別的なもの」、「他の法律によって使用が禁止されている商標」や「国際信義に反する商標」は、この規定により、商標登録できません
・実際に、特許庁の審査において、「経営会計士」(国家資格と誤認する)・「龍馬 LEMON」(周知・著名な歴史上の人物名を含む)や「シャンパン塩キャラメルカヌレ」(国際信義に反するおそれ)が拒絶されています